デューン 砂丘の子どもたち [新訳版] / フランク・ハーバート / 酒井昭伸訳 / ハヤカワ文庫SF 上下巻 各1480円+税
カバーイラスト: 加藤直之 / カバーデザイン: 久留一郎デザイン室 / 制作協力: Art & Antiques LECURIO
Children of Dune by Frank Herbert, 1976

ポールとチェイニーの子ども、レトとガーニーの話。書いてあることの半分も意味がわからない文章や会話からボンヤリ立ち上がる<黄金の道>やらクラリゼック<終滅の戦嵐>やらが魅力的。未来が見えるポールが逃げた道を、レトがあえて進む全体の筋立てもいいし、生まれながりにフレメンで覚醒していた二人が計画する構図もいい。デューンの緑化が必ずしも良いことではなかったり、ポールが生きてたりという大ネタもあったり。でもやってることはさっぱり分からない。
ぐんぐん良くなるのがファラッディーンとティエカニック。作者もきっとそうだったんでしょう、後半、章最初の言葉でやたら同じハルク・アル=アーダが出てくるなと思っていたら歴史家ファラッディーンの新しい名前で、なるほどねと。
前半のジェシカは、レトやガニーマにいいように弄ばされているのに(『砂の惑星』でもポールから下に見られるシーンがあった)、途中からはしっかり手綱を握っていて、ちょっと違和感。アリアの忌み子化を放置した苦悩とか最後のシーンでの後悔とかないのかね。
酒井昭伸の翻訳メモはただただ凄い。ここまで調べた上で訳してくれているのだから、それを読んでわからないのは私の責任。堺三保は「シリーズ全作を原文で読んでいる」とあり、ふーんと思ってたのけど、フランク・ハーバートの6作だけじゃなくて、ブライアン・ハーバートとケヴィン・J・アンダースンとの共作がこんなにあるのを読んでたの!? と、尊敬します。ただし、『公家アトレイデ』『公家ハルコンネン』『公家コリノ』は読んだけどあまり感心した記憶はありません。で、壮大な物語のラストは機械生命体とゴーラによるオールスター総出演だとか。うーん、2006年にそれでは、少々ありきたり過ぎないか?翻訳出るかなぁ。難しいだろうなぁ。
以下はあらすじのメモ。何十年ぶりかの再読で、何一つ覚えてない。あ、レトが砂蟲になるのは旧版のカバー絵でなんとなく覚えてたか。それくらい。
<上巻>
ポールの子どもレトとガニーマは9歳になっている。
カラダンからジェシカが来る。ジェシカはガーニーに密輸業者とコンタクトするよう命令する。
ポールの妹アリアは、体内の先人のうちハルコンネン男爵に憑依され、忌み子と化している。夫ダンカンは憑依に気づく。
シャッダム四世の娘でイルーランの妹ウェンシシアは息子ファラッディーンを皇帝にすべく、レトとガニーマの人狩り虎による殺害計画を立てる。
アラキスには<伝道者>が現れ、アリアらを糾弾する。<伝道者>はコリノ家のサルーサ・セクンドゥスでファラッディーンとも会う。
ジェシカはベネ・ゲセリット修女会の説得によりレトとガニーマで子どもを作るよう説得するために来ていることをレトに知られる。
アリアは、コリノ家の仕業に見せるようジェシカの誘拐をダンカンに依頼する。一方で直接殺害しようとするが失敗し、ジェシカに逃げられる。
レトとガニーマは人狩り虎に襲われる。レトは死んだことにして砂漠へ逃げる。ガニーマは自己暗示でレトの死を信じ込む。
ダンカンはジェシカをサルーサ・セクンドゥスへ連れて行き、ジェシカはファラッディーンを教育する。その場でダンカンは自殺しようとする。
<下巻>
伝道者はアリアを妹と呼ぶ。
アイダホはジェシカと仲違いし、アトレイデス家を出る演技をする。
レトは伝説のジャクルートゥーを目指し、アリアの部下ジャヴィードの父ナムリ、ガーニーらに捕まる。
アリアはガニーマにファラッディーンと婚約させようとする。ガニーマはレトの死の報復のためにこれを受ける。
レトは、ジェシカがガーニーを通じて仕掛けたゴム・ジャッバールによるスパイスの多量摂取から高次の意識が芽生え、<黄金の道>を見る。
レトは見張りのサビーハを催眠術にかけ、砂漠へ逃げる。
ガニーマはスティルガー、イルーランと共にいる。
アイダホはアリアに排除されかける。
ジェシカはファラッディーンをベネ・ゲセリットにする。
レトは棄民のムリーズと出会う。シエチにはジャクルートゥーを追われたサビーハがいる。
ガーニーはナムリを殺す。ナムリがアリアの手下で、ジェシカの命は嘘だったと知る。
レトは砂漠にて砂鱒に全身を覆わせる。
レトは伝道者、ポールと対話する。ポールが選ばなかった道をレトが選び、人類のためにクラリゼック<終滅の戦嵐>が不可避と言う。
アリアを信じるスティルガーを説得できず、アイダホは、自分を殺させることで、逃亡を余儀なくさせる。スティルガーはガニーマ、イルーラン、妻はラーラを連れて逃げる。
レトとポールはガーニーと会い、アラキスに向かう。
スティルガーのシエチにアリアの使者が訪れ、交渉中に、ガニーマを誘拐する。
ファラッディーンがジェシカとともにアラキスのアリアの大聖堂に来る。広場では伝道者ポールが道を説くが殺される。レトとガニーマが現れる。忌み子のアリアは自殺する。
レトはガニーマと表向きの結婚をするが、実際にはガニーマはファラッディーンと結婚する。レトはヒトでなくなって4000年生きるという。