本の雑誌 2024年12月号 – 鏡明「本には利益だけではない、文化としての意味がある」

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本の雑誌 2024年12月号 (No.498) 流氷かち割り号 / 本の雑誌社 / 900円 + 税
表紙デザイン クラフト・エヴィング商會 [吉田博美・吉田篤弘] / 表紙イラスト 沢野ひとし

特集:あの頃、君は読んでいた。

昭和回顧の特集だけど若干私より上の世代。庄司薫もW村上も先輩が好きだったなぁとかそんな感じ。「本の雑誌」自体がサブカル第1世代の賜物ということなのかもしれません。ベストセラーになった『ノルウェイの森』が面白くなくて、なぜ上の世代はあんなに村上春樹が好きなのか謎だったのだけど、永江朗のリアルタイムな感想を読んで納得。その前の諸作が「ぼくのために書かれた小説」だったのね。どうりで先輩たちの本棚に並んでたわけだ。

速水健朗はアスキーにいたのか。当時、私は大学時代の「Oh! FM」から「DOS/V Magazine」「The Windows」「Windows Magazine」を毎月買い、ときどき「ざべ」、後半は「Super ASCII」「msdn」購入していました (msdnはとても全部読めなかった)。でも全部消えてしまった…。

Z世代の英保キリカの読み方は至って普通で、とても良い。ついでに椎名誠も読んで欲しかったが、この調子でけなされても困るからな。

特集 追悼・茶木則雄

本の雑誌の連載陣で『帰りたくない!』の著者で恐妻家、「深夜プラス1」の店長。同店には上京してすぐに行きました。一般人よりはそれなりに知っているつもりでしたが、本屋大賞やこのミステリーがすごいの裏側にいた人とは知りませんでした。凄い仕掛け人だったんですね。

しかしまぁ、人でなしではないだけで、とんでもないろくでなしだったようで、ここまで愛を持ってぶっちゃけ書かれる人も珍しい。最近会ってなかったと皆が言うのも、宇田川拓也の「ジャンルへの熱は冷めるのだなと寂しさを覚えた」のも正直でいい。

関係ないけど藤脇邦夫の締めにはしんみりした。

新刊

タイトルが良かったのが石川美南の紹介する『その子どもはなぜ、おかゆのなかで煮えているのか』。ルーマニア生まれの作家の自伝的長編らしい。なぜ煮えているの ?
大森望の新刊は藤井太洋と小川哲。どっちも強い。
酒井貞道の紹介する『ダブルマザー』の真相はちょっと知りたい。
東えりかのノンフィクションは背景に閉塞感漂うものが多く時代を感じる。

石川美南と松井ゆかりは今月で連載終了。コンスタントに良い紹介でした。

連載

河崎秋子の3万円お買い物は潔い。三万円の意味なんて全然気にしてなさそうな、でも少し気にしてるところがいい。
栗原康の自立からの卒業は分からなくもないが、全員がこれやったら国が滅ぶからねぇ。8050問題をさらっと切り抜けるのはちょっと残念。
山脇麻生のマンガの『薔薇が咲くとき』は、カバー絵の強気そうな女性の心がどう柔らかくなるのか、ならないのかちょっと興味。
urbansea は車雑誌「ENGINE」。そう、私とも無縁の世界だけど、高級で行くなら何から何まで高級な思考であってほしい、できなくても。
新連載「メオト暦」は須賀典夫 & 井上荒野。お互いの甘さ加減が絶妙。沢野ひとしもだけど、72歳と62歳から八ヶ岳の麓に葉を建てて薪割りとか勇気あるな。
北村薫は福原麟太郎に触れ、銀座を正月に練り歩く万歳と、『夕鶴』でつうが与へうを呼び捨てにするシーンを拾い、時と共に分からなくなってしまった感覚と紹介。仕方ないとは思うものの、明らかに貧しくなっている事実が寂しい。
黒い昼食会によれば、佐伯泰英も読者の高齢化…というか死亡で売上が下がっていて、時代小説ブームも半分終わっているらしい。
三橋曉は日本でのフィルム・ノワールには誤謬があったとチクリ。
藤野眞功の紹介した岡田昇『BEAR』の引用箇所は単純にすごい。この野生の羆の写真はみたい。
服部文祥はずっと主張している、人口知能がどんなに進化しても入力・フィードバック・感じることがなければ意識は芽生えない論。次回は茂木健一郎のクオリア。
北原尚彦は『宇宙気流』でSFに目覚めたらしい。そう、アシモフは入門編として最高で、何読んでも面白かったんですよ、『宇宙の小石』とか、『鋼鉄都市』とか。また、絶版や品切れの意味がわからないとか、買えない本があるとか、ほんと皆が通ってきた道。まぁ、田舎の中高生だった私は気づくのがもっと遅かったですが。
鏡明は『ニーナ・シモンのガム』を紹介。「本には利益だけではない、文化としての意味がある」
青山南は「白雪姫」をディズニー映画(1937年!)とルトル・ゴールデン・ブックスで比較。お姫様が出てくるだけの退屈な映画と思ってたのに、こんな素敵な内容だったのか。観たい、観たい。あと言われてみればそうかなのだけどミュージカルなのね。
円城塔は世界を整理する2つの方法としてカテゴリーと索引を紹介。『索引 ~の歴史 書物史を変えた大発明』は面白そう。
風野春樹は香山リカの紹介。僻地で診療しているとは知ってたけど、精神科医で務めているもんだと思ってたから、50代で総合診療医として研修を受け、還暦過ぎて、2日に1回当直していると聞いてびっくり。東京で文化人も出来た人なのに医者したかったんだろうな。単純に尊敬します。
高頭佐和子は藤野千夜の10冊。青春系はもう少し若ければ読んでみたかったけどどうかな。逆に『じい散歩』はリアルすぎて読めないなぁ。

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