本の雑誌 2017年8月号 (No.410) / 本の雑誌社 / 778円 + 税
表紙デザイン クラフト・エヴィング商會 [吉田博美・吉田篤弘] / 表紙イラスト 沢野ひとし
特集は「知の巨人に挑む!」。
難しいテーマだったと思いますが直球勝負で力のある、良い特集でした。
松岡正剛はヘンにエラソーじゃなく、興味のあることを丁寧に、分かるように説明してくれます。取り上げる人物も何となく知っている岡倉天心や南方熊楠、全然知らない三枝博音の中に、ディックや大友克洋のような分かりやすいところを混ぜてくれる親切ぶり。インタビュアーは浜本さんでしょうか。
続く山本貴光の巨人の紹介も、19世紀にこんな人達が活躍していたんだなぁと単純に驚かせてくれます。英語が堪能なのは熊楠だけじゃないのね、当たり前か。
小林秀雄と山口昌男は名前を知るばかり。
荒俣宏は大学時代からのファン。きっかけはもちろん『帝都物語』ですが、『世界大博物図鑑』も「鳥類」と「魚類」を買って隅から隅まで読みました。博物学の深みや広さをストレートに伝える、見た目にも綺麗な本です。
全体として良い特集でしたがおじさん二人組は駄目。成り行き任せも良いですがここまでストレートに来たのなら、もう少しだけ事前に交渉して盛り上げるべきでした。
2017年上半期ベスト10で興味をひいたのはチェック済みの『横浜駅SF』くらい。時代劇や古代物に興味がないので1位の『蘇我の娘の古事記』もピンときません。
同様に詩も興味が無いので、堀井慶一郎の詩人が何人文庫に入っているかの調査も、中原中也は何故人気なのだろうか、以外の感想がありません。
秋葉直哉の文章は好きなのですが。
偶然知ったけど坪内祐三って、曾祖叔父が柳田國男なんですねぇ、で、坪内逍遥とは関係ない、と。
ペリー・ローダンはリブート物「ローダン NEO」が出るそうです。ちなみに本編は550巻。工藤稜のカバー絵が毎回高いクオリティで嬉しくなります。
北村薫は『黄昏』の南伸坊が天狗になる話。これは読みたい! 天狗の格好で幼稚園の正面玄関に回った続きが読みたい!
入江敦彦は『京都ぎらい』に対するレベルが違いすぎる論評。文庫化の際には是非、二人の高度なあてこすり対談を収録してほしい。いや「本の雑誌」で対談して欲しい。
青山南によるとアメリカの文芸雑誌のほとんどは原稿料を払わないのだとか。びっくり。それでも大勢の作家予備軍が投稿するのはそれが将来役立つと考えるから。
風野春樹によると「自閉症」は病気でなく、治療法もない、と。本当に知りませんでした。
沢野ひとしは驚愕の展開。今まで不思議な女性とのふわっとした不思議で良好な夢のような関係が、一転して下世話な三面記事のよう。これどうなるんだ!?
新刊では明治期の鉄道ミステリーという発想が良い『開化鐡道探偵』。