本の雑誌 2016年11月号 (No.401) / 本の雑誌社 / 667円 + 税
表紙デザイン 和田誠 / 表紙イラスト 沢野ひとし
原稿到着順で青山南が一番最後でも、最後から2番目でもない小事件発生。「メキシコのオアハカにいる」からうっかり早く書いてしまったんでしょうねぇ、やっぱり。先月号の希望通り2ページめの真ん中、そして、最後は安定の「島の人」内澤旬子でした。
今月の本棚は新井素子邸。理想の局地です。29畳の部屋に床から天井まで作り付けの本棚が十数列並び、しかも作家別に収めてまだ空きのある状態。こんな本棚、初めて見ました。羨ましすぎます。そういう目で見ると写真の笑みは余裕の笑みですかね。
ところで現在本屋では『星へ行く船』シリーズが新刊で判型も大きくなって面積みされています。カバー絵もどこか懐かしくクラクラしました。
特集は「めざせ新人賞!」
新人賞を目指している人には必読のガイド。3ページに及ぶ新人賞一覧の膨大なリストには応募枚数や賞金金額といった項目と共に、ある意味一番重要な選考委員の顔ぶれも。どんな作品、どんな新人を欲しているのかが比較できます。また大森望、川田美穂、杉江松恋の鼎談も、賞の裏側や傾向など実質的に参考になる部分が満載です。オール読物や文學界の新人賞授与式が社内の会議室で行われるって知ってました? これ最初に知ってたら、申し込まない人もいるんじゃないかなぁ、大事にされてないみたいで。
鈴木輝一郎の「小説家サバイバル術」で面白かったのが、作家活動を続けていく上での様々な阻害要因のうちの1つが「介護」だということ。時間の自由がきくため親類から親の介護を押し付けられ、結果、介護離職につながるのだとか。シビアです。
秋葉直哉は「八月三十一日」と題したエッセイ。このページだけ本の雑誌から独立し、時間も空間も超越しています。先月号で覚えたきれいな書体「精興社書体」の新刊で小説を読んでみたいです。
西村賢太によると田中慎弥は東京に移住したらしい。
内澤旬子は浜本さんのスーツ選び。絞るばかりが能じゃなく、五十男には五十男の色気も余裕も必要とか。なるほど。ちなみに椎名誠は「岸恵子級のお洒落キング」らしい。ただ無造作にジーンズを履いてるだけじゃないのですね…。
円城塔は『あなたの知らない超絶技巧プログラミングの世界』。小学生にプログラムを教えるにあたっては、この本で取り上げられているようなテーマを面白がる子供を育てて欲しい、と。ですよねぇ。
風野春樹は『ナチスドイツと障害者「安楽死」計画』。普通の人(の内なる思想)が怖いという話し。
堀井慶一郎は『流転の海』シリーズ愛。最終刊が出たと同時にぴったし読み終わって感動を味わうには、まだ読み始めないほうが良いとか。
東えりかは北方謙三愛(?)。元秘書の手になるブックガイドですが、これほど時間と手間を掛けなければ小説は生まれないのだということがよく分かるエッセイ。新人賞を狙っている人には刺激的な内容と思います。
新刊では戦後の炭鉱での連続怪死事件を扱った『黒面の狐』、年をとった死体の『失踪者』、スペインのエンターテイメント小説って想像もつかない『ヴェサリウスの秘密』が気になりました。
今月号のダブリは平松洋子と入江敦彦で「夜露死苦」。宮崎の常連読者、中武照美と都甲幸治で福岡の書店「Rethink Books」。「本とビールと焼酎と」だなんて、福岡行ったら絶対行く!!