スーパーノヴァ – 作者二人の会話がもう少し面白かったらな

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スーパーノヴァ エピソード1 騎士と姫と流星 / ディー・レスタリ / 福武慎太郎監訳、西野恵子訳 / 上智大学出版 2800円+税
カバーデザイン: 田中未来 (numnum.inc)
Supernova by Dee Lestari, 2001

ディマスとレウベンは、「モラルと社会的価値観が対立し、議論を巻き起こすようなラブストーリー」を執筆しながら対話を続けている。作中作の物語では多国籍企業に勤めるレーが既婚者のラナと恋に落ち、並行して娼婦でモデルのディーヴァの物語が語られ、ネット上のサロン、スーパーノヴァでの対話が挿入される。

本の雑誌 2025年3月号で大森望が、『HUJAN 雨』を「インドネシアの長編SFの邦訳はたぶん史上初」と紹介していたので、積読していた本書はSFじゃないの? と思って読み始めました。結果、メタフィクションではあるけど、SFではありませんでした。実際レウベンはディマスに「お前が書きたいのはSFじゃないだろう?」(p.289) と言ってます。大森望は正しい。

作中作のラブストーリーはありきたりだけど面白かった。レーと既婚者ラナの密会での気持ちのすれ違い、ラナの夫アルウィンの立ち居振る舞い、ディーヴァの人間的に魅力的な造形、レーとディーヴァの関係性等々。
そして、ここに挿入されるディマスとレウベンの突っ込みも、物語の陳腐さをカバーして効果期的で、特にラストでそれぞれ描かれる三者の様子は盛り上がりました。
ただレウベンの一人語りは、ディマスの親切なツッコミがありながらも表層的にしか理解できず感心しませんでした。いろんな言葉は並ぶけど、サイエンスを感じない。監訳者は「数学、量子力学など科学的知識を駆使し、恋愛小説の形式をとって彼の理論を表現しようとする。」としますが、本当にそれが出来ていたら、そしてもう少しこの二人の会話に知的な喜びを感じられたら、傑作だったのになと思います。

p.126 に「かりあげクン」が出てきてびっくり。
p.35 ハーバードのビジネスレビュー -> ハーバードビジネスレビュー (だよね?)

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