本の雑誌 2024年11月号 (No.497) 頑固一徹レンコン号 / 本の雑誌社 / 700円 + 税
表紙デザイン クラフト・エヴィング商會 [吉田博美・吉田篤弘] / 表紙イラスト 沢野ひとし
特集:犯罪小説に震えろ!
なかなか読み進められませんでした。こうまで進みが悪いのも珍しいので、犯罪小説に興味がないんだなぁ、と改めて思います。北上次郎と同じく「悪意がただよう暗い小説」が苦手で「気分よく本を読みたい」んですよね(p.54)。ブロック、エルロイ、ドン・ウィンズロウとから名前はよく見るのですが…。リスト中、読んだことがあるのが比較的きれいどころのコンゲーム『百万ドルを取りかえせ!』だけってのもその証でしょう。そんな中で面白そうなのは江戸川乱歩「蠱」、昔からちらほら気になる『テスカトリポカ』。
小野一光の、小説にならないほどに意味不明のノンフィクションはいいですね。
読者アンケートは「この文学賞が好きだ!」。山田風太郎賞の受賞作がどれも骨太で強く面白そうです。
新刊
石川美南の紹介でトルストイにもまだ未訳があったんだと思ったら、あれはレフで、これはアレクセイ。そうか違うのかと思ってたら、アレクセイにも、アレクセイ・コンスタンチノヴィッチ・トルストイとアレクセイ・ニコラエヴィッチ・トルストイがいるらしい。どっちやねん (どっちでもいい)。ところで p.57の広告に『スターゲイザー』とありますが、私には杉真理しか浮かびません。
大森望のSFでは円城塔の新作『コード・ブッダ』。あらすじだけ読んでもワクワク。早川書房激推しで前宣伝を散々見たロマンタジー『フォース・ウィング』はどうなんかなぁ…。
酒井貞道のミステリでは『檜垣澤家の炎上』『ぼくは化け物きみは怪物』『少女マクベス』(原題は「殺人者のオーディション」)、色々あるなぁと遠い目。でも最後の「痛々しいほど未熟」は良い。
松井ゆかりの紹介する高校を舞台にした連作短編集『春のほとりで』も、内容が良ければ良いだけ、読後はぐったりしそうです。
東えりかが『言語学バーリ・トゥード Round2 原語版SASUKEに挑む』で、最終決戦はフリースタイルラップバトルらしい。はて、どこかで聞いたことがあるような。
霜月蒼の『越境』の紹介で久しぶりにクレイグ・トーマスの名前を見ました。『闇の奥へ』から数冊は本当に面白かった。興奮して、その熱量だけでホームページを作ったくらい。
連載
♪akiraの『親愛なる八本脚の友だち』。ミズダコが語り手になるパートもあるとか。これはちょっといいかも。
山脇麻生は『あのこが好きだった本』。この絵柄でこの内容で素直に読めるか、すっかりネジ曲がってて駄目かどっちか。
北原尚彦は「装丁違いに振り回される!」。わかるわー。本格的に文庫を買い始めた時、新潮文庫のカバーの背表紙のフォーマットが短い期間に2回変わり、ハヤカワ文庫も1回変わり(後にはトールサイズになる)、統一感のない本棚がすごく嫌でした。今はもう同じ作家を1箇所に固めることも不可能なので微塵も思いませんが…。
羨ましいのは日下三蔵。諸星大二郎と星野之宣を一ヶ所にまとめる良いシーンがあります。この断捨離連載は3年で終了。途中からはどこからどこに移動しているのかさっぱり分からなくなりましたが、筆者の嬉しさ楽しさが伝わってくる良い連載でした。
岡崎武志は20世紀の、古本屋が商売として成り立っていた時代の古本はもっと高かった、と。確かに。ブックオフが最低価格を100円に決め、ネットが普及し、一気に吹き飛びました。それはレコード屋も同じく。
鏡明も昔話で『「ビックリハウス」と政治関心の戦後史』の中にある、論争を避ける風潮から政治からも遠ざかる流れを紹介。それが現代まで続く訳ですね…。
三角窓口に『死んだ山田と教室』からの引用で「男子校の席替えがこの世で最も意味のないもの」とか。笑ってしまった。
藤岡みなみは『なめらかな世界と、その敵』の中の新幹線の短編を紹介。面白そうで慌てて読むのをスキップ。そろそろ買うか。
風野春樹は韓医学。そんなのがあったのか、と驚きました。そして、ひとつの症状に複数の薬を出す多剤併用は日本では多くて海外からは呆れらているとか。いや、そんなのあるの? 私が認識していないだけ?
津野海太郎はお休み。意図的みたいだが心配になるのでやめてほしい。