本の雑誌 2024年8月号 – 多様性のため、進化に目的はない

投稿日: カテゴリー

本の雑誌 2024年8月号 (No.494) 夏空カモメ襲来号 / 本の雑誌社 / 800円 + 税
表紙デザイン クラフト・エヴィング商會 [吉田博美・吉田篤弘] / 表紙イラスト 沢野ひとし

特集: 2024年度上半期ベスト10 & 大学生フリペ選手権

上半期1位は『死んだ山田と教室』。面白そうだけど、男子高校生のノリとやらに合うかどうかも大きく、私は微妙に合わないのではと想像しています。2位は阪神の謎の老人監督を描く『虎の血』、3位は『万両役者の扇』。
ミステリーの1位は『両京十五日』。中華冒険小説ってところに大味感を想うのは『三体』のせい。2位はキング『ビリー・サマーズ』。買ったけどいつ読むんだろうな…。ちなみにキングは執筆順に読んでいて次はダークタワーの3作目『荒地』だけど当然忘れているので、1作目から読み直す予定。もう『荒地』から先の最終巻まで固めて読んじゃうかな。
SFは『ロボットの夢の都市』が1位で、2位は『感傷ファンタスマゴリィ』。「文章力が頭抜けている。」って評が気になります。
時代小説は担当外ながら5冊とも良さげ。毎度の青木逸美の紹介が上手い。彼女は本を読むスピードが落ちたのが悩みらしく、残りの人生でどれだけ読めるかと嘆息していてまさに私と同じ。
海外文学は変化球気味の作品が多い。大河小説みたいなのは流行らないのでしょうか。『マーリ・アルメイダの七つの月』なんて特殊設定ミステリ。『リーディング・リスト』は父娘の文学談義に終始するのかしらん。
ノンフィクションは『麻雀漫画50年史』。麻雀漫画には冬木糸一と同じ程度の思い入れなので、逆に買わねばという意識が強まりました。『読めない人が「読む」世界』はこれからのことを考えると身につまされます。関連して内田樹の図書カードでお買い物。買い物よりも、買って読まない本を巡る思考だけど面白かった。「「読もうと思っただけで、読まずに終わりました」という人間的欠如のデータ」は、正論。が、もう少し表現を手加減してほしい。

もう一つの特集は「勝手に大学生フリペ選手権!」誰も頼んでいないのに勝手にネタにして格付けする、本の雑誌らしい特集。愛があるからいいか。学生なのに仕組みを継続できるのが立派です。

新刊

柿沼瑛子は、新刊紹介よりも本人が1960年初めにLAで子供時代を過ごした方にへぇとなりました。東えりかの旦那が亡くなり「思い描いていた将来が消滅した」ってのには、うーん。「消滅」の言葉が強すぎる。
石川美南は『関心領域』。映画も小説も評価が高いけど、あまりに聞きすぎたので何となくもういいかなという気に。
大森望のSFは低調。最高の評価でも星3 1/2。『イエロー・ジャケット/アイスクリーム』の懐かし過ぎるサイバーパンク文体、とやらが逆にちょっと興味。
宇田川拓也の紹介する『雷龍楼の殺人』はきっと凄いんだろな。

連載

穂村弘「クローズドサークル」。この気持ち、私は海外旅行からの帰りがまさにこんな感じでわかります。緊張してアルコールも控える行きに比べて、帰りはすべてから開放され、ただただいつまでも続いていて欲しい気分。孤島に隔絶され、個室を提供されるのは超贅沢です。
小山力也の古本屋紹介は自由が丘。知らない店があったのか!? と期待したら、あー、あれか…の西村文生堂。昔はミステリがずらりと並ぶ店だったのに、リニューアルしてほんと何の店だかわからなくなって魅力半減。駅前の不二家書店の方がよほど魅力的です。
大槻ケンヂは最終回。コンスタントに面白かったのに残念。ラストに取り上げたグレッグ・レイク自伝のエイジアのエピソードにへぇ。
北村薫は「信じられないミス」として都筑道夫が挙げる「巌」と「厳」。「薄気味わるくなってくる」とまで言うことかなぁ、自分の名前でたまたま気づいただけじゃん、というのは言い過ぎか?
服部文祥の取り上げる本はいつも深く納得できる。今回は『生物はなぜ死ぬのか』『なぜヒトだけ老いるのか』。自己複製能力を持つアミノ酸が生まれるのは、バラバラにした腕時計を25mプールに投げ込んで、ぐるぐるかき回してたら腕時計ができたくらいの確率 (だからインテリジェンスデザインというトンデモ説が出てくる)。多様性のためには進化に目的があってはならない。平均寿命は伸びたが、ヒトとしての寿命はさほど伸びていない。どれも面白いし、どれも頷ける。円城塔の「科学は人類を救わない!?」も肌感覚が合う点は同じ。
風野春樹によると1冊のSF小説、映画『ジュラシック・パーク』が古代DNA研究の信用を地に落としたとか。それだけ影響を与えればクライトンもしてやったりでしょう。

北原尚彦の『犬神家の一族』は、私も持ってた昔の気味の悪い女性の絵のカバー。これですよ、これ!彼の出身は成蹊。若いときから趣味を極められる、金持ちのボンボン達というステレオタイプのイメージが浮かびます、羨ましい (そして大学は青学)。偶然ですが藤井書店で購入経験があります。途中の階段から文庫本を見つけた記憶。
日下三蔵は駿河屋の詳細な情報。何でもかんでも送料無料で受け付けてくれるわけではない。いつか使うかも。

三角窓口の中武照美の「文系の研究本を読んでないことに改めて気づかされた」はまさに(理系も読んでないけど)。試飲販売人田村和隆のあの日は帰ってこない、が今の日本の状況を表しているようで寂しい。

堀井憲一郎は落語になるとマジ。門外漢も面白く読めました。
吉田伸子は原田ひ香の10冊。ガチファンなのに淡々とした紹介でもったいない。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です