本の雑誌 2024年5月号 – 「アーガイル」は裏がありそうでちょっと期待

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本の雑誌 2024年5月号 (No.491) 鯉のぼり追いかけ号 / 本の雑誌社 / 700円 + 税
表紙デザイン クラフト・エヴィング商會 [吉田博美・吉田篤弘] / 表紙イラスト 沢野ひとし

特集: そのタイトルに決まるまで

座談会、作者、翻訳者等々の苦労話と実例で構成された面白い特集でした。巻末の索引がラノベの長いタイトルのお陰で楽しい事になっていますが、今回だけは余興で副題まで含めればいいのに。
関連するわけでもないんだろうけど三角窓口では鈴木輝一郎がフランス書院文庫官能大賞通過作品を紹介。
「奴隷だった獣人の少年が、忌み嫌われている魔族女性達と一緒にイチャラブしながら幸せになるお話。」とか。
ラノベはシュリンクラップされているものがあるらしく (初めて知った)、またフランス書院文庫は内容が内容だけにどちらも立ち読みしづらく (それはわかる)、タイトルとカバー絵で勝負らしい。

座談会で新潮文庫の例が挙がっていますが、個人的にはひどい例が浮かびます、ジェフリー・アーチャーやクレイグ・トーマスのタイトルネタバラシ系。何であんな直截的なタイトルを付けたのか。ラノベの中身を説明したい、売りたいとは違うし、タイトルだけでかっこいいわけでもないし、意味がわかりません。

新刊

石川美南の海外小説がいい。奇人変人揃いの白水社2本立て『穴持たずども』『恐るべき緑』(フィクションの度合いが増えていくというのがいい)、イタリア語、ドイツ語の間で分断され、ダム湖に沈む『この村にとどまる』も。
大森望では『ここはすべての夜明け前』『冬に子供が生まれる』が良さそう。あと「見た目はSFなのにSFとして読めない作品」という表現が素敵。何をもってSFというのかの一つのアンチパターンです。
東えりかのノンフィクションは、目の前に存在する(けど、なかなか見えない)現実を突きつける作品ばかり。『生ける死者の震災霊性論』『福島第一原発事故の「真実」ドキュメント編』『同 検証編』『戦雲 要塞化する沖縄、島々の記録』『日本人が知らない台湾有事』
酒井貞道、宇田川拓也の新刊紹介を読むたびに、最近のミステリーの趣向の深さは凄くて素人は近寄れないなと思います。歌野晶午『それは令和のことでした』とか。私はどう読むのだろうか。

連載

大槻ケンヂは村上朝日堂と昔の彼女の話。こんな会話ができたのならお互い「あたり」だったと思います。
徳永圭子は「冗談の裏側に隠された卑下や媚びのようなものが、自分に浴びせられているように感じて」、「冗談がわからない」らしい。気持ちを理解したい気もするが、ビミョーに次元の異なる感もあり。
urbansea は雑誌で取り上げられる老いの話。週刊SPAが「70歳まで働ける?」らしい。ちょっと前まで「僕たちのなんとか」ってやってたのが、そうなったことに逆に自分が老いを感じました。
漫画「本を売る技術」。これ、リブロじゃ駄目なのかなぁ? 名前を変える意味が分からない。
服部文祥は化石燃料をほぼ使わない生活に戻れないのなら、そちらに行けばいい、と。相変わらず強い。
読者のおすすめでクリスティ『春にして君を離れ』。非常な嫌悪感を抱く人物が出るらしい。昔からふわふわな恋愛小説と思いこんでいたので、へぇ、と。機会があったら読んでみたい。
鏡明は「アーガイル」を絶賛。映画館で予告を見たときはスパイ小説を書いた女性作家が現実の事件に巻き込まれるだけのおチャラカアクション映画と思ったけど、裏がありそうな紹介。現実とフィクションが入れ替わるパターンかなと勝手に想像。一方、「デューン 砂の惑星 Part 2」は酷評。無駄に重苦しいいと。うーん、わからないでもないが、その中でうまくエンタメしてたと思うがな。
風野春樹は『心理学を遊撃する』。科学では論文の研究の追試がうまくいかない再現性問題があるとか。これは論文のためだけの都合の良いデータを取得しているためらしく、これが心理学になると更に難しそうなのは容易に想像できます。が、心理学では多数の問題があり、再現性問題は「四天王の中の最弱」らしい。闇は深いな。
堀井慶一郎は本屋大賞10冊を速読で再読して『成瀬は天下を取りに行く』が1位。途中のコメントも歯切れよく、その上で1位も当てていて、ただただ凄い。
沢野ひとしは小梅線の話から転じて、ぐだぐだとアルコールの話。なんかアル中みたいな文章。
読み物作家ガイドは、はやみねかおるの10冊。有名な子ども向けミステリの作家らしい。知らない世界。子どもでは有名な『かいけつゾロリ』みたいなもんか。
久住昌之の次の漫画は「40歳代の女性がバーに一人で入る楽しさに目覚めていく話」らしい。むちゃくちゃ流行りそう…。「古本屋台」の方が好みだけどな。

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