本の雑誌 2022年8月号 (No.470) / 本の雑誌社 / 800円 + 税
表紙デザイン クラフト・エヴィング商會 [吉田博美・吉田篤弘] / 表紙イラスト 沢野ひとし
「本棚が見たい!」は吉田戦車。欲のない感じがらしいと言えばらしく想像どおりなんだけど、もう少し自分の本が並んでもいいんじゃないかなぁ。あと『ドラゴンボール』の背表紙をいい加減に並べてる人なんて初めて見たよ。
特集は「ミステリー新時代到来!」
「本の雑誌」の新刊評を読んでいて、自分で設定を作っておいて、自分で解決する話が多いなぁとは思っていました。これを「特殊設定」ミステリーと言うそうです。途中のベン図がよく表していて、「SFミステリー」だと対象読者が狭くなるが、「特殊設定ミステリー」なら何でもあり感が増して読者の幅が広がるとか。若林踏の巻頭エッセイで近年の流れを紹介し、千街晶之の「作家名鑑20」で手際よく作家を紹介。いや凄い事になってたんだなぁと改めて驚きました。
書き手のマインドが新しく、クリスティやクイーンから入らずとも、アニメやゲームや漫画やライトノベルを大量に消費した上で、ジャンルを軽々と横断しながらミステリーもやってみましたという下地。もう、人種が違います。しかし、作者らの真摯さ、面白くしてやろう、読者に挑戦してやろうが感じられるからか、不思議と違和感を感じず、素直に読んでみたいと思いました。
読むならどれかな。「タイムリープ・ミステリとしては近年では最高水準と言える『時空犯』(潮谷験)」か、青春ミステリの超新星、紙城堺介『僕が答える君の謎解き』か。
百合小説には3つのパターンがあるらしい。性愛を描く「百合」、世界と戦う「シスターフッド」、世界と戦わない「友情」。で、百合小説をシスターフッド的に描いたのが上半期2位の青崎有吾『恋澤姉妹』、1位は翻訳ミステリ『模索者』。
早見和真『八月の母』が直木賞の候補にさえ挙がらず完全に肩透かしなのが可笑しいような寂しいような。
服部文祥は『カルロ・ロヴェッリの科学とは何か』。紀元前6世紀に「この大地は宙に浮かんでいる」と看破したアナクシマンドロスの話。異次元の哲学者、科学者だわ。
池澤春菜の紹介する「すあま」。聞いたことも見たこともない私は九州人です。
べつやくれいはいつも飄々としたエッセイが楽しいが今回は特に決まりましたね、八木透監修『日本の鬼図鑑』。
風野春樹はインネパ店(ネパール人のやっているインド料理屋)の話。そうか、不法ギリギリのやり口で入国して仕送りしているんだな、厳しいわ…。
佐々木敦は山田正紀の10冊。日本のSF作家に触れていないにしても、まったく像を結ばない人は少なく、そんな一人。『神狩り』。発端の事件は面白そうだけど、天才が出てくるの苦手なんだよな…。