本の雑誌 2022年4月号 (No.466) / 本の雑誌社 / 700円 + 税
表紙デザイン クラフト・エヴィング商會 [吉田博美・吉田篤弘] / 表紙イラスト 沢野ひとし
本棚が見たい!に登場した、本と珈琲と暮らす人、大森皓太のブックカフェ風自宅が超綺麗。決してい広い部屋ではなさそうだが、ごちゃごちゃしておらず、並んでいる本も落ち着いています。こういう棚に漫画やエンタメ系は似合わないよなぁ…。
特集は「スポーツ本の春!」
オールタイムベスト50も、21世紀しばりの漫画ガイドも充実しています。グッドウィン『来年があるさ』と、度々話題のマイケル・ルイス『マネー・ボール』、そしてニック・ホーンビィという作家さんを覚えました。
高山羽根子は、3万円使い放題の特集でプロ野球選手名鑑に触れてたのが縁かな。2ページに愛がびっちり詰まっています。
対談の長谷川晶一は『詰むや、詰まざるや』の人。2年連続の西武vsヤクルトの日本シリーズを詳述した作品。好きな人にはたまらない内容だろうと、残念ながら想像するだけ。
新刊では、藤ふくろうのリュドミラ・ウリツカヤ『緑の天幕』に触れないわけにはいかず。1950年代から1990年代のソビエトを背景にした群像劇。まさか同じような閉塞感が21世紀に復活するとは思いませんでした。
吉野仁と古山裕樹は、偶然、「類型にはまった作品」の紹介から。展開としては、「でも」と繋いでいくのだけど、イマイチなんじゃないかなぁ?と深読みします。 逆に類型でも良さげなのが北上次郎の、朝比奈あすか『ななみの海』。もっとも、冒頭の早見和真『八月の母』の紹介が凄すぎてかすみます…。その『八月の母』は、書評家が内容に触れられない「仕掛け」があるようで、二部構成を明かすのみ。愛に恵まれない母娘がどうなるのか激しく気になります。
高頭佐和子の紹介している本がいい。角田光代『タラント』、蝉谷めぐ実『おんなの女房』、金原ひとみ『ミーツ・ザ・ワールド』。
すずきたけしのウィリアム・ブルーイット『極北の動物誌』、湯浅邦弘『世界は縮まれり』もいい。後者は1910年に世界一周した一行の記録を解説したもの。今でさえ海外に行くと文化の差異に驚くんだから100年前なんてなぁ。
薬丸岳『刑事弁護人』。頑なに秘めている真実とはなんだ。
♪akira は、60年代アイルランドを舞台のパトリック・マッケイブ『ブッチャー・ボーイ』と、ケネス・ブラナー監督の「ベルファスト」。ジャック・ヒギンズと共通する、一種の昔話と思っていたのに、こちらもウクライナ侵攻で突然、表出してきた感じがします。
山岸真のSF新刊では、『空のあらゆる鳥を』のカバーも印象的だったチャーリー・ジェーン・アンダーズの『永遠の真夜中の都市』。常に太陽に同じ面を向ける惑星の話。偏西風(?)が凄いとか?
田中香織は谷和野『オープンクローゼット』。魅力的な紹介です。
下井草秀はスチャダラパー『大余談』。想像以上にグダグダしてそう。
図書カード3万円使い放題は新井素子。ホーガンをさくっと手にするのがいいな。
大槻ケンヂがスペンサーを読んでいることにちょっと驚き。
高野秀行は「コージー・カタストロフ」の紹介。大災害が発生するも主人公だけはいい目を見ることとか。それを言っては身も蓋もない気がするが。
日下三蔵は連載6回目が終わってまだメインの書庫が手つかずと判明。ご家族、特に母親の腰が心配です。
舘浦あざらしは禁断の兄妹文学。野坂昭如『火垂るの墓』、佐野洋子『わたしが妹だったとき』みたく悲しくなるか、村山由佳『星々の舟』みたくどうしたってハッピーエンディングでない恋愛モノになるか。あの作品があったなぁ、思ったけど、ネタバレだから書けないか。
服部文祥はブライアン・グリーン『時間の終わりまで』。個人的にとても受け入れやすい、常日頃思っているような説明が続きます。曰く、生命も物理現象に過ぎない、最終的にエントロピーが高くなるなら、一時的に秩序のある状態も認めてくれる、生命そのものは(中略)世界を無秩序方向に進めることに加担している等々。
V林田は貨車駅舎本の紹介。その中でさらっと京都市のある市営住宅群には22年現在も1軒残っている、と。えええ、昭和22年じゃなくて、2022年で!? とびっくり。
古本屋台は重松清登場。いいなぁ。
平松洋子はグリーンカフェ西郷山の汁なし肉まぜそば。先週、古屋兎丸のサイン会で代官山に行き、時間があれば寄ろうと思っていたのですが、3時間待ちで疲れたのと、逆方向だったので伺えず。機会があれば行きます。公園も楽しみ。
山本文緒の10冊。亡くなって、熱量の高い追悼に触れ、そんなに愛されていたのかと驚きました。藤田香織の紹介を読むと、おそらく同時代を生きた人々の複雑な思いをすくい取ってきたのだろうと想像します。