本の雑誌 2018年8月号 (No.422) / 本の雑誌社 / 778円 + 税
表紙デザイン クラフト・エヴィング商會 [吉田博美・吉田篤弘] / 表紙イラスト 沢野ひとし
感想
「本棚が見たい!」は牧眞司の書棚。ハヤカワ文庫SFの青背と、創元推理文庫SFの白とピンクの混じる棚が羨ましい。でも後者はあんまりきれいに並ばないのだなぁ。
特集は「消えた出版社を探せ!」。メインの出版社の話は致命的に作家を知らず付いていけないため流し読み。最後の大塚啓高「出版社の「正しい」終わらせ方」だけは「倒産」と「破産」の違いから説明してくれてわかりやすかったです。
もう一つの特集「2018年上半期ベスト1」は目黒考二の強力な押しで瀬尾まいこ『そして、バトンは渡された』。キャラクターだけでなく、ストーリーも、構成も素晴らしいとにこと。ただし世間では37歳の男が17歳の女の子と一緒に住んでHな関係にならず低評価とも。どっちの意見が正しいのか気になるな。
「着せ替えの手帖」は「バブル期を代表するような生き方をしていて、今なお美しく皺もないのに貫禄を醸し出す同世代女性」として挙げるのが近藤サト。へぇ。ただし、内澤旬子の求めるスーツではなく和装。
そういえば先日呼ばれた結婚パーティーのレギュレーションが「お気に入りのいけてる格好」で、私は軽くパニクりましたが、その際、何人か見かけたのが和装(男性も、女性も、外国人も)。そうか、その手があったかと思いました。ちなみに私は人に選んでもらったピンクのシャツに光沢のあるネクタイと、夏物の紺のスーツ。それで精一杯です。
新装再編版の『スラムダンク』はバカ売れ中。皮膚科の待合室で断続的に途中までしか読んでないけど、盛り上がり半端ないから分かります。
宮田珠己はロト7の話で連載開始。もっと得体の知れないテーマが良かった。
内田剛はまた無理やりタイトルをつなげるスタイルに戻り残念。
「残響のマルジナリア」は石井桃子の大量の付箋がついた本の話。付箋は剥がせなくなるから止めて、という図書館のお願いを最近読みましたが、まぁ自分の本ならいいか。そもそもマルジナリア自体は書き込みだし。
四方田犬彦は「中学校の教室にビートルズのファンが一人しかいなかったから、『ビートルズ世代』という言葉は成り立たないという論理」を批判しており、鏡明も同じ意見。「量が質を否定数というのは、現代の病いである」とも。
秋葉直哉のエッセイを最初読んだ時は意味がわからず自分の理解力の無さにがっかりしましたが、ラスト、関雅晴が高円寺コクテイル書房で歌っている図が明かされてからはパーッと夏の光にあふれ、再読したらキラキラでした。上手い仕掛けです。
堀井慶一郎は70年代京都の書店の紹介。いつものふざけきったスタイルも若干弱めで、そこかしこから懐かしい思い出が溢れ出てしまうのは、やはり何もかもが消えてしまった現実からでしょう。
沢野ひとしは「茶館の女」としてボッタクリ茶屋の話。男ならみんなひっかかりそう…。
『かがみの孤城』で直木賞を受賞した辻村深月の10冊。選者は国樹由香。誰だっけと思ったらそうか喜国雅彦の嫁か。で、辻村深月ですが最近流行り(?)の作品同士のリンクが有機的で、一度ファンになったらとことん楽しめう。是非、年代順に読みたい。
新刊紹介は低調で『粘膜探偵』と『彼女の恐喝』くらい。目黒考二は「おやっと思った」と言葉を選んでいますが、飯嶋和一は『星夜航行』で人物よりも時代を描く方に重きを置いたらしい。