本屋大賞2017 / 本の雑誌社 / 2017 / 556円+税
表紙デザイン 寄藤文平
大賞は恩田陸『蜜蜂と遠雷』。ピアノコンクールが舞台の青春劇で、幅広い層に訴えた結果でしょう。直木賞と同時受賞、恩田陸は2回目の受賞と、直木賞のアンチテーゼとして草の根で始まった「本屋大賞」も、一区切り付いた感があります。
2位の森絵都『みかづき』も同様に、読むと元気が出る(はずの)小説。
逆に割りを食ったのが一次投票での1位『罪の声』。読者を選んだ気がします。10位までの傾向を見ても割りとコージーな作品が多く、ハードな感じはあと、原田マハ『暗幕のゲルニカ』くらい。『夜行』は森見登美彦ファンが推した結果でしょう。
11位から13位も同様にコージーで、住野よる、川村元気と並ぶと一種のデジャヴ感さえあります。これが15位から21位になると小説力の強い作品が並ぶから不思議。中でも16位『東京會舘とわたし』はドラマに満ちあふれていそうな辻村深月作品。
24位『玉依姫』は阿部智里の八咫烏シリーズの1冊。全く知らないシリーズ名。覚えました。
知らない作者名では2016年に亡くなったらしい津島佑子。確認できるだけで3冊が推薦されていますが(P.70, P.73, P.82)、どれも厳しい読書になりそう。
須賀しのぶは、今読んでいる「おすすめ文庫王国2018」で知りました。確認できるだけで3冊登場(P.83 に2冊、P.117)。野球小説以外もあるのね。
翻訳小説の部
1位は『ハリネズミの願い』。総得票数12票という寂しさに昨年同様、悲しくなります。寓話的な話で読めば元気が出てくるところはベスト10と同様でしょう。
2位の『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』が好み。そして「本屋大賞」も含め推薦文の中でもっとも惹かれたジュンク堂書店三宮店の小寺啓史が推す『森の人々』(P.104)。多重構造の中で人間の様々な問題を扱うようで、どこにハマるかでその人が分析できそうです。
発掘本
P.120から数ページに面白そうなものが凝縮されている不思議。『僕は、そして僕たちはどう生きるか』(今、流行っている本と間違えたけど、あちらは『君たちはどう生きるか』)『ツナグ』(「君の名は。」を超えるってマジ?)『きみはポラリス』『鉄の夢』『神のロジック、人間のマジック』『博物誌』『サイラス・マーナー』。高頭佐和子は相変わらず中山可穂推し(P.118)。こうまで来ると読んでみるか、と思いますな。
店員さんの勤める本屋の名前が出るのも「本屋大賞」ならでは。
不思議な名前、可愛い名前はどうしても記憶に残ります。前者では『ジャッジメント』(P.43)や『午後二時の証言者たち』(P.79)を推す山田倫子の「コーチャンフォーグループリラブ運動公園通り店」が圧勝。後者では猪瀬勇が勤める「うさぎや宇都宮駅東口店」がいい味を出しています。
個人的な話ですが、加来智美が勤める「明屋書店新田原店」(P.48)を見た時、「あれ、宮崎の書店員は1次も2次も参加がなかったんじゃなかったけ?」(P.1)と思ったのですが、新田原は新富町のそれではないようですね。福岡県行橋市みたい。