本の雑誌2016年1月号 – 『昭和残影 父のこと』は触れていいと思うよ。

本の雑誌 2016年1月号 (No.391) / 本の雑誌社 / 778円 + 税
表紙デザイン 和田誠 / 表紙イラスト 沢野ひとし

「本の雑誌」史上、多分3度目の帯は菊池寛賞受賞帯。おめでとうございます! 「本屋大賞」始め、業界に与えた影響や貢献はとても大きく当然の受賞ですね。

驚いたことに「本棚が見たい!」は今年も継続。カラーページは高くコストが気になりますが、好きな連載です。良い棚を期待したいと思います。ちなみに最近、自由が丘不二家書店の「本の雑誌」が充実しているのだけど取り上げられるのか? と勝手に期待しています。そういうこととは関係なく入荷が増えているといいけど。

特集は「本の雑誌が選ぶ2015年度ベスト10」。意味があるようで、ないようで、やっぱり意味のあるベスト10ですが、今回の実質1位は『朝が来る』。辻村深月よりも松村眞喜子の貢献を優先させた結果が『エンジェルメーカー』。うーん、ここはコンスタントに傑作を出し、直木賞も取りながら国民的大作家へあと少しの辻村深月でいいんじゃなかったのかなぁ…。
その意味では北上次郎のベスト10が本流ですよね。『朝が来る』『永い言い訳』『戦場のコックたち』。
海外ミステリー(?)が1位でそれはそれで嬉しい、『エンジェルメーカー』。ちなみにSF枠の鏡明も5位です。ちなみにSF1位は『紙の動物園』でなく『月世界小説』。相変わらず選出したベスト10そのものよりも選出の過程の思考が面白いです。
他の本では『小林カツ代と栗原はるみ』が興味。その時代との戦いであろうことは簡単に予想できますが、対比の面白さもありそう。

ところで目黒考二の『昭和残影 父のこと』を本誌記事からはもちろん、今号の目次からも落とす徹底ぶりには、いやはや、もういいんじゃないかなぁ、と。出版社の広告が入ってから顔色をうかがうような記事が増えた事実もありませんし、仲間内で褒め合う編集部でないことは内外で周知されていることと思うのですが…。ちなみに嵐山光三郎(p.78)と白石朗(p.88)が取り上げています。

佐久間文子の現代文学ベスト10は、2作品が都甲幸治の新刊ガイドと重なっていてちょっと安易に思えたけど、年間ベスト級は締め切り間際に出るってことかなぁと思ったり。『朝が来る』も、かつてのイーガンもそうですしねぇ。栗下直也のノンフィクションベスト10は1位よりも第10位の『冒険歌手』の方がよほど気になります。

入江敦彦は京都魔界本の特集。本当にこの人のターゲットは広い。異形コレクションなんて全部(?)読んでいるみたいだし。しかも『京都魔界めぐり』から他の著書までガイドするあたりの親切心も素晴らしい。着せ替えの手帖は細身のスーツや裾丈。自分の姿を思うと背筋が凍ります。今思いついたが入江敦彦と内澤旬子で対談するのはどうか?

三角窓口。徳永ミカはその書名を教えてくれよ、こっちが気になるわ。

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