ゴッホは欺く – 良いアーチャー作品

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ゴッホは欺く(上)(下) / ジェフリー・アーチャー / 永井淳訳 / 新潮文庫 / 各629円+税
カバー写真: (C) Paul Stuart / カバー撮影: 広瀬達郎(新潮社写真部) / デザイン: 新潮社装幀室
False Impression by Jeffrey Archer, 2005

旧家ウェントワース家の女主人ヴィクトリアが殺害される。融資元のフェンストンがウェントラース・コレクションに含まれるゴッホの『耳を切った自画像』を狙っての犯行だった。その交渉にあたったアンナはヴィクトリアの妹アラベラと共に絵を守ろうとする。FBI のジャックはフェンストンの過去の一連の犯罪とアンナを捜査する。

アーチャーの大河小説ではないタイプの作品。このところはこちらの方が調子が良く、本作品も素晴らしいリーダビリティと気持ちのよい役者達でグイグイ読ませます。

小さな会話や描写がうまいんですよね、ほんと。クランツのノザキ刃物店のシーケンスなんてどうということのないシーンですが店主への憧れとか彼女のわずかな良心、人間的なものがかいま見えます。

勘の悪い私は明かされるまで分かりませんでしたが、背景の取込も決まってますよね、サスペンスの意味でも、事件とのかかわり合いの意味でも。新潮文庫の常で裏カバーの解説ではあっさりネタ割れしていますが … :-(

なお日本が舞台になる箇所もありますが、ここは何の違和感もなく、安心して読めます。また日本人もしっかりメインの人物として気持よく動き会話してくれます。ここらは訳者の功績かもしれませんね。

 

 

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