コールドファイア(上)(下) / ディーン・R・クーンツ / 大久保寛訳 文春文庫 520円(上)(下)とも
装画 : 藤田新策 / デザイン : 坂田政則
Cold Fire by Dean R. Koontz 1991
ジム・アイアンハートは神の啓示に従い、全米中で人命を救助し続けている。彼の行動に気づいたホリー・ソーンは取材の対象として彼に接するが、同乗した飛行機事故が回避される現場に立ち会ったことをきっかけに恋人となる。
二人は共通した風車小屋の夢を見るが、それはジムが幼少期を過ごした田舎にあった。風車小屋では超常現象と共に宇宙人からのメッセージが伝えられる。
前半部の奇跡を演じる部分のスピード感は良いクーンツ。飛行機事故回避やその後の展開も盛り上がりますが、後半、自分探しの旅は凡庸で、前半とのつながりも薄い。ネタも明かされてしまえば、またそれか…って感じ。1991年執筆ですから仕方ないか。
読みどころは宮部みゆきの長文の解説。
キング派の彼女がクーンツの解説を書くなんて、と意外な感じもしますが、内容は一度見限っていたクーンツを『ナイトヴィジョン』で見なおしつつ、師キングとの対比の末に「わたしにはクーンツのような作品は書けない」と結論付ける骨太なもの。さらには出版当時のオウム事件も絡めます。これは一読を。