竹取物語 全訳注 / 上坂信男 / 講談社学術文庫 / 360円 (1978)
カバーデザイン 久住和代
解説者は「この作品の世界を伝奇としか説明できないのは、社会体制に無批判に惰性的に随従していく、いわゆる常識をもって理解しようとするからである。」として、「世俗と超俗の対比」を中心に読み解いてきます。翁も嫗も求婚者も帝も俗人。これを超俗のかぐや姫は憐れみ、少しでも自分に近づくことを願う、と。
もちろん私は伝奇として読みましたとも :-) 面白かったですよ。
かぐや姫の超俗性も作者が言うほど天使かな? 火鼠の皮衣が本物かどうか試すため「火の中にうちくべて焼かせ給ふに、めらめらと焼け」てしまって、顔面蒼白の右大臣阿倍御主人に対して、かけた言葉が「あな嬉し」ですよ。
そもそも地球に来たのだって前世で悪いことをしたから。賤しき俗世界に島流しされ、時期が来たので月への帰還が許された女です。島流し先の土着民5人に無理難題をふっかけ、帝を3年も宙ぶらりんにした、俗な人にしか見えないのだけど…。
ちなみに解説者が、かぐや姫が前世で犯した「罪」について一切触れないのも不思議な感じがしました。わざと無視したのでしょうか。
無視したと言えば最終段落の2文「峯にてすべきやう教へ給ふ。御文薬の壺並べて、火をつけて燃やすべき仰せ給ふ。」の現代語訳が抜けています。手元の本は 昭和53年第1刷、昭和59年第6刷。私、偉いな。
2014/9/18 追記。2013年10月10日 第38刷 でも同じようです。やった!