本の雑誌 2013年8月号 (No.362) / 本の雑誌社 / 762円 + 税
表紙デザイン 和田誠 / 表紙イラスト 沢野ひとし
すでに発売されている9月号では、8月号の誤植に触れられていますが、8月号 P.72のデ・パルマって、間違いですよね? 懐かしい響きだけど…。
間室道子「ミステリって伏線があるとかどんでん返しがすごいとか言うだけで、ネタバラシになるそうだ。」って本当にそのとおり。読んでいる間、そ ればかりが気になります。書評家は何も言わないで欲しいし、帯もカバー絵も気を遣って欲しいし、ネタバラシまんまの邦題(特に新潮文庫)も止めてほしい。 矢口誠が嫌悪している「人間が描けていない」というステレオタイプの書評もなぁ。
特集は「いま「青木まりこ現象」を再検証する」。何度目でしょうか。Google IMEで「あおき」と入力するだけで変換候補に「青木まりこ現象」が出るくらいメジャーな「本の雑誌」発の現象。今回は識者の意見に春日武彦と藤田紘一郎 の両方が副交換神経優位を出すなど、意外と科学的な説明がつきました。読者発「私の✕✕現象!」はあるある感が半端無くて、大笑いでした。
もう一つの特集は 「2013年上半期ベスト1」。1位の『はだかんぼうたち』も4位の『島はぼくらと』もいいですが個人的には『暗殺者の正義』が嬉しい。最近はジョン・ ル・カレの復刊や、ハヤカワ文庫のフェアとかあって、冒険小説がちょっぴり復活だそうです。
連載が始まったときはどうしたもんかと思いましたが、不思議な圧倒感でグイグイ押し寄せてくるうちに内澤旬子は最終回。最後も同じことをつらつら 繰り返しながら飽きさせないのだから技ですよね。吉野朔実はいつもと違うタッチで可愛いな、と思ったらカラーページの白黒化。最後は例の新刊だよな。
直木賞候補入りの宮内悠介は評だけでわくわく。SFはホント夏です。田中啓文のミステリーも冴えています。青山南はケルアック映画の考察。ヘン な揚げ足取りでなく、その向こうに思いを馳せた推理に愛を感じます。萩原魚雷が発見(?)した佐藤正午はデビュー30周年。『永遠の1/2』なんてつ い、この前じゃん…。
入江敦彦は「青春のバイブル」。適格な評の連続で全編取り上げたいくらい。確信犯的な作家側の事情よりも、一連の小説を聖書にした当時の人のナイーブさを笑うって、これベストセラー小説全般に言えることですよね。
巻末は伊坂幸太郎の10冊。本屋大賞の常連で非常に気になっていたのに未読なのは、どうにもタイトルと内容が絡まず、本屋で頭がウニウニになっていたから。これはよい企画です。