本の雑誌 2013年4月号 (No.358) / 本の雑誌社 / 648円 + 税
表紙デザイン 和田誠 / 表紙イラスト 沢野ひとし
「プロフェッショナルの流儀」ではピアニストの森下唯が奥泉光『シューマンの指』を解読。エッセイ自体が音楽を奏でているような軽やかさで、一度文字で語 られた音楽をまた音楽に戻してくれます。対象の奥泉光だけでなく、K・S・ロビンソンやステープルドンまで言及され、単にピアニストに音楽小説を読んでも らいましたとは違うレベル。で、検索してみて、まず男の人でびっくり、次に父が森下一仁と聞いてなおびっくり。森下唯も素晴らしいが、依頼した編集者も素 晴らしい。
特集は「最強の警察小説!」。浜本編集人渾身の座談会は残念ながら今一つ乗り切れず。シンポ教授や柳下毅一郎の、与えられたテーマを活き活きと語るエッセイの方が好きでした。鈴木先輩の警察官に『64』を渡す企画も失敗でしょう。
北條一浩は片岡義男評よりも導入の方が面白かった。選者は津野海太郎がよかったのではないかと思います。で、その津野海太郎とツボちゃんは小沢昭 一つながり。入江敦彦は自費出版(とやくみつる)を木っ端微塵に貶します。言葉は優しいんですけどね、グリグリと。
宮田珠己がスキーがうまくなったのは きっと道具の進歩です。最近のスキーは短くてよく曲がりますからね。となると昔のは「しなくてもいい努力」だったのかもしれませんが…。
新刊紹介では、裏で打ち合わせしてるんではというシンクロ率を見せる(それはそれで面白い趣向ですが)トヨザキ社長と佐久間文子のアンナ・カヴァ ン、関口苑生、間室道子の推す本とどれも良さそうですが(教室内女王様の失脚->復活を演出する『王妃の帰還』とか)、単体で見ると『天冥の標』の 「いま日本でいちばん面白いSF」の言い切り方が凄いです。小飼弾も小川一水は推してますし、そうまで言うなら買うかな。
水鏡子はハヤカワ文庫の目録語 り。多くの人にはどうでもいい話でしょうが、面白いよー。面白すぎるよー。