厭な小説

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厭な小説 / 京極夏彦 / 祥伝社 / 1800円+税

ありとあらゆる物理的、精神的、生理的な「厭」を物語の中に詰め込み、ついでに造本も厭な感じに古びて作った意欲的(?)な作品。確かに気分が滅入る話しは多いものの、そこまで「厭」になるでなく、また処理もすべてホラー風味で意外とこじんまりとまとまっています。

中では「厭な子供」が一番意味不明で、話も投げ出しですが、イメージが先行してよかった。途中何度か出てくる得体のしれない白い物体感がよく出ていたと思います。同様に「厭な先祖」の仏壇の中のイメージもいいですね。もったいないのは話の最後にオチをつけてしまった点。作家の良心でしょうかね。「厭な扉」「厭な小説」も同様でした。また「厭な老人」や「厭な彼女」に至っては正体を明かしてしまい、もっともったいない。ただずっと意味を持たせなければよいのかと言うと、「厭な先祖」の志村の行動のように意味がなさすぎて残念な面もありで、難しいですが。

古びた造本はよくできていて笑うだけですが、最悪なのは紙質。一度濡れたらはい、それまでよ的なザラ紙で、怖くて持ち歩けませんでした。これも狙いか?

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