本の雑誌 2012年3月号 (No.345) / 本の雑誌社 / 648円 + 税
表紙デザイン 和田誠 / 表紙イラスト 沢野ひとし
特集は「懐かし本大会!」。「懐かし本」=「ミステリ & SF」いう構図ですが誰しもそうなのでしょうかね、確かに学校図書館にルパンとホームズと怪人二十面相のハードカバーはありましたが戦記物もよく読みました、真珠湾攻撃やらミッドウエー海戦やら。あとは学研のひみつシリーズかなぁ、って、あれは漫画か。ところでシリーズ名を出されても分からないのでリストや書影や活字の組み方、挿絵の様子を紹介してくれると助かります。「人食いバラ」はオチだけ知りたい。
円城塔は電子出版に対する理系の物書きの発言で、その揺れ方が面白い。amazon は便利だけど、書店は好きだし…。amazon がリアル書店を持つ話も伝わってきています(http://goodereader.com/blog/electronic-readers/amazon-in-the-process-of-launching-a-retail-store/)。芥川賞の選考が事件になったことを受けたわけでもないのでしょうが小森収は突発的選評研究で、日本推理作家協会賞の選考に都筑道夫視点からの疑問を投げています。個人的には1年前の選考と基準がぶれても仕方ないと思うのですがね、評の仕方が問題という面はあれど。
新刊では佐久間文子&トヨザキ社長推薦の『短くて恐ろしいフィルの時代』がダントツに面白そう。訳者はまた岸本佐知子。すごい打率です。酒井貞道は『弁護士探偵物語』を長い長い評の末に★★★と、ちょっと曖昧。ここはどちらかに振って欲しかった。そして『開錠師』のイントロは確かに惹かれます。
北杜夫の新刊評にはさほどときめきませんでしたが、入江敦彦の取り上げ方は凄い。個人的な好きを語るだけでなく、自分が読んだことを忘れるほどに吸収、消化し尽くしている部分は特に。お陰でベストセラーのほんわかエッセイの人という認識を改めました。
常に問題提起を分かりやすい形で続ける大井潤太郎は再販制。電子書籍も同じ構図で、出版元が自己の利益を守るために作家や文化を前に出して抵抗している節があるのだけど、そろそろ出版社側からの反論も聞きたい所。
ブルボン小林は芥川賞作家のペンネームだったとは…。
オビミシュランは連載お疲れ様。当初は私も本当に連載できるか心配でしたが、帯は売るためという視点がぶれなかったのが良かったですね。
津野海太郎が連載開始。ためることへの執着が減ったというので、相当捨てたんだろうなと思わせておいて蔵書が4000冊~5000冊。笑いました。死ぬまで捨てないのが500冊~1000冊。俺もそんなもんかも知れないけど。
チュンバも連載開始。警察物ですがさすがに手馴れてますねぇ。関係者のようです(笑)。
宮田珠己は引き続きの連載で嬉しいのですが、今回はちょっと手抜き気味。
『新明解国語辞典』の広告が入っているなぁと思ったら中の人におじさん三人組がインタビュー。残念ながら広告の「恋愛」の説明のほうが感心しました。
キムラ弁護士の法要は坂本弁護士のもの。二十三回忌という数の多さと、二人の関連に驚きます。
ミミ中野も絶賛する沢野ひとしの北京紹介。私も一度行ったことがあるのですがここまでの魅力は感じませんでした。再体験したいぞ。
倉阪鬼一郎の10冊。まさに「知る人ぞ知る」系で紹介された内容で既知はゼロ。文庫化不可能な新書による仕掛けって何だろうという俄然興味の『三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人』や、人が死にまくる『ブラッド』、田舎に生まれた才人が潰されていく『田舎の事件』などどれも面白そうです。
最後にクロの冥福を祈ります。