チャイルド44 / トム・ロブ・スミス (上)(下) / 田口俊樹訳 / 新潮文庫 / 705円(上)、667円(下) 税別
カバー写真 : (C) Alex Majoli / Magnum Photos / Ed Pritchard / ゲッティ イメージズ
Child 44 by Tom rob Smith
2008年冒険小説界を席巻した作品。スターリン体制のソビエトで秘密警察MGBの捜査官レオの事件を扱う。
前半は44本のピンが刺さったマップや沈痛なプロローグを含め、読むのが苦しくなるほどの重さで久しぶりの「冒険小説」読書に酔いました。特に秘密警察内部での個々の立場、地雷源を歩くかの緊迫した会話、捜査等々、時代を冒険小説のおいしい時代にわざわざ持ってきた意味をステレオタイプなまでに描いてくれます。更には中年の危機までそこに絡める力技。どこまで行くのかと後半に突入。すると一転して乱暴な展開と、そこまで作り込むのか…という背景やストーリーに酔いも覚め、終わってみればかなり残念感。上巻だけだったら五つ星ですが、期待が高すぎたのか。
一貫して民衆は良い側として描かれており、旧ソ連に対する配慮もばっちりです。後半のスピーディーな展開もあって映画化は当然念頭に置いていたのでしょう、リドリー・スコットが監督するそうです。冬のモスクワをどう描くか楽しみです。