水底の骨 / アーロン・エルキンズ / 嵯峨静江訳 / ハヤカワ文庫 / 861円 (820円)
カバー写真 (C) Jefferson Hayman/CORBIS / カバーデザイン ハヤカワ・デザイン
Where There’s a Will by Aaron Elkins
ハワイの牧場主トーケルソン兄弟が殺害、行方不明となり、その妹と、甥姪4人が遺産を継ぐ。10年後に甥の一人を訪れたギデオンと友人のジョンは、事件当日に墜落した飛行機が発見され、その引き揚げ現場に立ち会うことになる。中からは足の骨が発見され、調査の結果、被害者は当初考えられていた人間でないことを知る。
ギデオン物の流れには、彼が骨の鑑定を誤り、みんなをミスリードし、でも最後に気が付いて意外な事実が分かる、ってパターンがありますが、今回はそれを逆手に取ったような「むぅ」といったトリックが出てきます。問題は物語の流れとこの点がしっくり来ていないことで、これは本作品を通して全体に感じられる部分です。キャラクター造形を含め、すべてのパーツの構成が甘く凡庸。何となく書き飛ばした感があります。
あと気になったのは、ギデオンは嫌々渋々、犯罪がらみの新しい骨に向き合わされている、という設定がいつからこんな事件を求める性格になったのか? 少なくとも初期の頃は「他のすべての司法人類学者がそうであるように、人骨は無尽蔵の魅惑の根源であり、はるか昔に亡くなった身許のわからない人間の遺骨と向かい合うのは、挑戦を受けることだった (p.102)」なんてことは言わなかったと思うのですがね。