本の雑誌 9月号 (No.291) / 本の雑誌社 / 530円 (505円)
表紙デザイン 和田誠 / 表紙イラスト 沢野ひとし
特集は「エンタメ・ノンフの秋」。って、なんじゃい? と思いながら読み進めていくと、全体像が浮かび上がってくる好企画。これまで単発的に読んできたものが、こうして「エンターテインメント・ノンフィクション」と名づけることで、エッセイでも、いわゆるノンフィクションでもない一ジャンルが確かにあるな、と納得させる趣向。極めつけに連載の高野秀行が「実録・アメリカ超能力部隊」というホント奇想天外な本を紹介すれば、冒頭、今月の一冊では「国語辞書出生の秘密」というこれまた面白そうな本を紹介。浜ちゃんもやるね。さて書店に棚はできるか!?
続いてシンポ教授の戦後ミステリー関係者へのインタビューで第一弾は原田裕。これもまた分量の割に構成が絶妙で読ませる、読ませる。大御所作家の若かりし頃のエピソードがビシバシ出て来て、疎い人間でも十分に惹きつけられました。シリーズなのでこれからも期待です。
そして触れなきゃいけない定期購読者向けの「本のちらし」(Web本の雑誌よりPDFで読めます)は、目黒考二インタビュー。ここまで本に囲まれると夢のよう。仕事場とは言え、風呂場をつぶしてまで本棚というのがすごい。のほほんとしたやりとりがよく伝わり、このまま本誌に載せられる出来。助っ人君らもやりますな。
今月号はこの3つでとても満足でした。
青山南は剣さんの「いいね、いいね、いいね」を発見し、穂村弘は贈る本で悩み、永江朗はまたメッタコンビと書評がダブり、こだわった藤谷治の二部作は大森望にあっさりまとめられ、軽く「なかなかしみじみとした世界」と流した「エロマンガ島の三人」はトヨザキ社長にそのしみじみの理由まで語られ、旗色悪し。全然関係ないけど別会社から文庫化されたウエちゃんの本もチュンバの本もまだ本の雑誌社から出ているんですね。ふ~ん。