少年少女漂流記 / 古屋×乙一×兎丸 / 集英社 / 1260円 (1200円)
装丁: chutte
10代後半に特有の悩みやら、妄想やら、混沌やら、現実やらをぐしゃぐしゃにして描いた短編集。古屋兎丸と乙一の合作。あくまで二人の共同作品ということで、名義もこのようになっている。夜な夜なファミレスで話しを考えていたらしい。
一番好きな話しは「お菓子帝国」。超おバカな話しですが、主人公の明るい表情に元気をもらいました。前向きでいいやね。「モンスターエンジン」はよくあるタイプの話しながら二人の関係が正直に描けてよかった。親に花を持たされたから仕方なく来た、ってあたりが非常にリアルです。他の作品は「魔女っ子サキちゃん」を除き、どれも予想を裏切られる展開で、ホント何なんだ、これは、って感じ。しかも最後は力技、驚きのホームルームで呆然としますが、すっきりした読後感ですので、作者らの術中にはまったって感じなんでしょうか。ただし結末に関してそう思うのも私がすっかり大人になってしまい、この時代を客観的に眺められるせいかもしれません。それこそ10代の自分に読ませた感想が聞いてみたいです。
ところで10台後半として間違いなく重要な性的な話しが完全に省かれているのは、二人の共同作業だとどうしても恥ずかしくて話にならなかったからだろうなぁ、違うかなぁ。またドラえもんに「台風のフー子」という話しがありますが、それへの言及がないのは疑問。鳥かごに台風を入れるところまで一緒なんだし、元ネタじゃないのかなぁ。乙一オリジナル??