本の雑誌 10月号 (No.328) / 本の雑誌社 / 648円 + 税
表紙デザイン 和田誠 / 表紙イラスト 沢野ひとし
冒頭は至る所で話題の『傷だらけの店長』。書店チェーンの雇われ店長が奮闘する話ですが、ただうな垂れるばかり。特に現在の書店業界を取り巻く厳しい状況を多少なりとも知っている者としては…。契約社員の超えられない壁について触れるピクウィック・クラブ榎本さんの例も関連があるような。伊野尾さんのエッセイが今回は明るいのがせめてもか。
特集は「世界の魔窟からスペシャル」。杉作J太郎さんのは本物の魔窟で大笑い。ただし想像する通り中身は真っ当そうで野坂昭如や寺山修司が並んでます。他の方の「魔窟」も色々あるけどまずは羨ましいな、と。一方、円城塔が紹介する巷で「自炊」と呼ぶらしい裁断->スキャニングはどうしても許せませんねぇ。
宮田珠己はガイドブックの紹介。これと『野外フェスのつくり方』が今号のハウツー本では面白そう。他に新刊では金子のぶお推薦本、特に『ヒップ』。そして『卵をめぐる祖父の戦争』『天冥の標』『宇宙開発SF傑作選』『アルバトロスは羽ばたかない』、沖縄遊郭の真実『辻の華』など。SF系のアンソロジーでは私も翻訳物偏重なので池澤春菜の「年刊日本SF傑作選」推薦の弁は説得力がありました。目黒、椎名という昔のSF好きが推す『ハンターズ・ラン』は別格。そして絲山秋子のインターホン・エッセイ、はらだみずきのサッカーストーリーズ。
新装刊「サマータイム・ブルース」では変更されて、むぅ。今風で悪くないけど、江口寿史のウォーショースキーが好きでした。