90億の神の御名 <ザ・ベスト・オブ・アーサー・C・クラーク 2> / アーサー・C・クラーク / 中村融編、浅倉久志他訳 / ハヤカワ文庫SF / 1000円+税
Cover Design 岩郷重力 + T.K
The Best of Arthur C. Clarke Vol.2
クラークの短編を中心にセレクトする3分冊の第2巻。
「前哨」に代表される獏とした不安を残す作品が多いのは、50年代という執筆時期のせいでしょうか。「おお地球よ…」「時間がいっぱい」「90億の神の御名」「夜明けの出会い」「星」とベースのノンフィクション「ベツヘレムの星」「遙かなる地球の歌」。どれも読ませます。アイデアとしては「星」がダントツですが、「遙かなる地球の歌」の舞台設定やキャラクター配置は、まるでアニメオタクの空想のよう。その分、ラストが泣かせます。
ユーモア物はどれも切れ味悪く「木星第五衛星」「密航者」「月に賭ける」「究極の旋律」「天の向こう側」「幽霊宇宙服」。
残りは「月面の休暇」と「海底牧場」。前者は甘いだけの作品でこれまで未訳も当然か。後者はまったく感心せず。これは長編も同じ。海ってそんなにいいのか!?