本の雑誌 2014年9月号 (No.375) 焼き餃子三日月号

本の雑誌 2014年9月号 (No.375) / 本の雑誌社 / 648円 + 税
表紙デザイン 和田誠 / 表紙イラスト 沢野ひとし

 ツボちゃんが2014年6月号の三角窓口に登場する読者15人の平均55歳。『本の雑誌』は高齢雑誌と言っています。では昔はどうなのでしょう?

三角窓口に28号への言及があるのでその号で調べると、登場している読者41人(2人は年齢不詳)の平均年齢は23.9歳。本当に若いです(そしてみな、よくわからないところでカタカナを使い、何かしら怒っています)。そして偶然にも28号の三角窓口内に「中年の読者より一言」として「本の雑誌」を「若者向きのハシタナサを感じ」る荒木芳彦さん(46歳)が、平均年齢を算出しているのですが、20号が21.9歳、2年後の27号が23.2歳だったとか。2年で1.3歳の増加とすると、32年後の現在で41.6歳分の増加で 65.5歳。そこまではいきませんが、55歳はその時点で予想されていた数字になります。同時代の生き残り『rockin’on』はどうなのでしょうか? 特集に「YES」とかあるから傾向は同じかもしれませんね。

特集は「本の雑誌が作る夏の100冊!」。夏の100冊コーナーなんて見向きもしない人間なので、今回の特集を読みながら、へぇ、夏になると読者数が増えるんだ、と驚きました。本屋大賞がいつも本を読む層に訴えるのに対し、夏の100冊は、本を読まない層に訴えることになっている、ようですが、ホントかなぁ…。
そんな背景と関係なしに本の雑誌の100冊は、1作家1作品で中高生向けを選出した、見事な読書初心者向きのコレクション。微妙にいい子ちゃんばかりじゃないところや、判型を重視し岩波少年文庫を除外する姿勢とか、非常に良いです。出版社縛りがないんだから、そりゃ、いいもの作れるよね、という気もしますが、書店員の対談によればPHP文庫は頑張っているそうなので、新潮、角川、集英社には期待しましょう。岩波文庫も同じように過去の資産を見なおして復活したわけですからね。ところで南天荘主人って、ツボちゃんのことでしょうか?

内澤旬子は宮田珠巳のネクタイを絶賛。えー、これ、いいんだ…。ネクタイ番外地。色合せだけ気をつかえば何でもありって、ファッションはやっぱり難しいです。

風野春樹は本当のナイチンゲールは苛烈な性格と知性と政治力の人で、だからこそ医療改革を成し遂げられたというマンガ『ナイチンゲール伝』を紹介。

津田淳子はブックデザインを通して本の『もの』としての力を伝える装幀家菊地信義の言葉を紹介。プログラミングの資料でも圧倒的に検索や相互参照は PDF のほうが便利ですが、それでも「本」が好きな理由は、その存在感や重みが好きだから。これだけ読んだ、まだこれだけある、という重みを感じながら読み進めるのも読書の大きな楽しみです。

椎名誠はリンさんチャーハンのリンさんが癌であったこと、民間療法による治療で完治したことを『がんが消えた 奇跡のスムージーと毎日つづけたこと』の紹介。この本を店頭で見たときも嫌悪感しか持たなかったのですが、椎名誠が観察した結果に言うのなら嘘ではないのだろうし、この治療方法に合致する人もいるかもと思い、ここに転載する次第。

青山南が装飾用に本をどっと買いこんでいくブティックがあるとして、人気は白い本という紹介ですが、これは日本の古書店でも同じですね。「装飾用洋書あります」として白い背表紙やかっこよさげなハードカバーを中身と関係なしに売っているのを見たことがありますし、実際、お客さんがそのように尋ねているのに居合わせたこともあります。なんだかなぁ、と残念でしたが。

p.65にさらりと「サンリオSF文庫総解説」の紹介。出版は楽しみですけど、買うかなぁ…。(2014/9/18 追記) 店頭で見て即買いしましたよ…。

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