本の雑誌 2015年4月号 – 永嶋俊一郎の本棚が素晴らしい

本の雑誌 2015年4月号 (No.382) / 本の雑誌社 / 667円 + 税
表紙デザイン 和田誠 / 表紙イラスト 沢野ひとし

冒頭カラー、文春文庫編集部永嶋俊一郎のハヤカワ文庫、文春文庫(海外ものの青背のみ)がずらーっと並んだ本棚を見て歓声と溜息が出ました。池澤春菜のSFやファンタジーで統一された本棚にも興奮しましたが、NVやミステリ文庫や文春文庫の混ざったこちらも夢のよう。奥行きの狭い、文庫専用の作り付けの本棚…。欲しいです。

特集は「夢の楽園「万歩書店」で遊ぼう!」。
「万歩書店」とは、岡山にある実在の巨大古本屋チェーン店だそうですが、そこを訪れた本好きの興奮がどのページからも伝わる好企画。天井まである本棚がズラーッと並んだ様子は壮観です。またスタッフの方のコメントの、地に足の着いた、頑張ったら大きくなりました感も良いです。ひとりの人の本棚が移動したような棚とかも。岡山行きたくなりました。
ところで古本者はなぁ、と思ったのが穂井田直美のエッセイ。女性一人放り出すなよなぁ…。ちなみに百瀬博教が先月号と今月号で出てきます。あ、小山力也もだな。声優のじゃないよ。

新刊めったくたガイドでは北上次郎のステッドマン『海を照らす光』。書評を読んでるだけでこちらももらい泣きしそうです。「ん?」となったのが大森望。いつも冒頭から飛ばしまくるのですが今回は宮部みゆき『悲嘆の門』から抑えたタッチで淡々と紹介。元気がないとかでなく別の人みたいです。そうか「SF」の語が次の小川一水の紹介まで出てこないからか。これ酒井貞道だと言われても驚きません。普通小説とSFの境界線はもうないね。
で、その鏡明は「SFが科学の進歩に追いつけなくなっているのではないか」という疑問を投げかけます。もちろん、最先端科学を理解しなければSFを書けないというわけではありませんが、ハインラインやクラークが提供した、SFから科学の側への新たな視点を、現代では描けなくなっている、描きづらくなっていることを指したもの。映画でもなかなか新しい映像は出てきませんからね。ある意味、真理では? もはや科学への視点の提供なんか目指していないというか。

内澤旬子「着せ替えの手帖」は私も大好きです。自分の好きなことを思いっきり語るのは読んでいるこちら側も楽しいもの。是非、連載を続けてください。

青山南は伊藤典夫の新訳版『華氏451度』。原文は「He knew that when he returned to the firehouse, he might wink at himself, a minstrel man, burnt-corked, in the mirror.」訳が素晴らしすぎます。

新訳を巡るあれこれ – atachibana’s blogatachibana.hatenablog.jp

入江敦彦ベストセラー温故知新は最終回で『窓ぎわのトットちゃん』。個性尊重の時代の幕開けが「らしさ」の押し付けでしかなかったという特段目新しくもない主張でしたが、最後に、では黒柳徹子が抑圧されていた場合の逃げ場は何か? という想定質問に対する回答が「おたく」。おいおい、ここからあと一話分展開してもいい内容じゃん。これで終わりなの!? 単行本では加筆されることを願います。

創刊40周年企画は1号から10号の復刊。買います、買います。字がすっごく小さいはずなので潰れやしないかと心配だけど。

 

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