乳と卵 – よかった

投稿日: カテゴリー

乳と卵 / 川上未映子 / 文春文庫 / 381円+税
アートワーク: 吉崎恵理 / デザイン: 大久保明子
2008年

姉の巻子と娘の緑子が大阪から上京してくる。緑子は筆談でしかコミュニケーションしない。巻子は豊胸手術のために上京してきた。

緑子の母を想う気持ちが幼くて切ない。初潮を「迎える」ことへの不安と、その先の、子どもをもつことへの嫌悪感。ただなんとなく思春期特有の心の惑いと思っていたら、すべてが「自分さえ生まれてこなければ母は肉体的にも精神的にもラクができたのに」という気持ちから出ているものだと知って悲嘆します。
ラスト、卵まみれのやり取りに本当に救われました。

技巧的なことはよくわかりませんが、この佐川恭一みたいなツラツラと関西弁混じりで、内省と気持ちと情景を並べるスタイルは、ラストのための逆算なのかなぁと思ったり。

「あなたたちの恋愛は瀕死」ハプニングを期待して新宿を歩く女とティッシュ配りの男。これも良かった。タイトルはわかるようでわからない。

State of the Word Tokyo 2024 のゲストが川上未映子と知り、この『乳と卵』と『夏物語』を一緒に買って薄い方のこちらを読んだらとてもよかったので、続けて『夏物語』を読み始めたら、ええっ! となり、慌てて感想をまとめている次第。
さぁ、どんな物語が待っているのか期待して読みます。「第一部 二〇〇八年夏」とあるから、きっと夏ちゃんの10年の話なんだろうな。この本では「なにひとつうまくゆかぬ仕事」「ただの希望」とあったけど、救われるラストでありますように。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です