本の雑誌 2020年11月号 – 「あんたが持ってる編集のプライドとやらにかけて、文学をどうにかしてくれよ!」

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本の雑誌 2020年11月号 (No.449) / 本の雑誌社 / 667円 + 税
表紙デザイン クラフト・エヴィング商會 [吉田博美・吉田篤弘] / 表紙イラスト 沢野ひとし

「今月の書斎」は読者、福井浩介さんのコミックス棚。冊数がどんなに多くても背表紙を見せたいですよね。奥行きが薄い自作の棚が素晴らしいです。

特集は「出版で大切なことはすべてマンガで学んだ!」

この業界、上から下まで厳しい話しか聞きませんが、それでもみんな本が好き。「マンガ」というフォーマットが好まれるのは、そんな思いをてらいなく真正面から訴えられるからでしょう。中では梶原治樹が紹介する『編集王』に登場する営業部の冷徹な男、東名の言葉が素晴らしい。

「俺だって本が好きだ! 好きで好きでしようがなくて、この業界にやってきたんだ! (中略)あんたが持ってる編集のプライドとやらにかけて、文学をどうにかしてくれよ! 俺はそうゆう “プライド” を、書店に営業して回りてえよ! 誇りで仕事が出来るんなら、給料なんかいらねえんだよこちとら! 自信たっぷりで書店に自慢出来る本を … 俺は喜び勇んで、営業して回りてえ … ただそれだけなんだよ …

参考: 本の雑誌11月号出版業界マンガ座談会載せきれなかったリストを大公開!
http://www.webdoku.jp/newshz/zasshi/2020/10/16/095230.html

新刊ではイーアン・ベアーズ『指差す標識の事例』は4つの章が4人の主人公の手記として描かれる作品は訳者も4人、池央耿、東江一紀、宮脇孝雄、日暮雅通と凄いメンバー。
『都市で進化する生物たち “ダーウィン” が街にやってくる』はタイトルどおりの話。鳥から吸血していた蚊はロンドン地下鉄では人から吸血し、駅ごとに進化する。

田代靖久は情報センター出版局「局長付き」の話し。最新の注意が必要な電話相手として「椎名さん(椎名誠)、藤原さん(藤原新也?)、森先生(森南海子?)、黒田さん(黒田清)」が挙がっているがなんだろう、面倒くさい相手なのかな。

西村賢太「己れの本然の資質で書き上げたとの自負から、この三作が我が創作のすべての基盤」というのは「墓前生活」「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」「芝公園六角堂跡」。

大山顕のマンションポエムは「世界征服系」。「手中におさめる」「掌中にする」と交通利便性を訴求する。「日本における「立地の良さ」とはすなわち「鉄道の利便性の良さ」」だから。誰もが何となく意識していたことをきっちり言葉にしてくれます。
一方、速水健朗も「1969年の東名高速道路の全線開通は、暴力団にも影響を及ぼしたようだ。」と負けていません。
p.88 服部文祥の名前がない。せっかくいい内容のエッセイなのに > 『人体5億年の記憶』。
北村薫が紹介する『140字の文豪たち』のアカウントは https://twitter.com/signbonbon 。少部数の本のようです。

円城塔が紹介するのは『創造された「故郷」 ケーニヒスベルクからカリーニングラードへ』。ドイツからソ連に支配が変わる中で追われたドイツ系住民が数十年ぶりに戻ることを許される。新しい住民たちとの異なる故郷の捉え方を日本オリジナルの書籍が紹介する。北方領土に日本人が戻れても同じことが起きそうだ。

風野春樹が「史実を超えた超ロングセラー」と紹介するのは『アレクサンドロス大王』。ちくま学芸文庫なのにヒロイック・ファンタジーだそうです、読みたい。

高頭佐和子はほんと中山可穂が好きだなぁ、読み物作家ガイド。俺が読んで面白いのかなぁ…。

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