本の雑誌 2026年1月号 – 『43歳頂点論』にアナキストを見る栗原康の読み方が良かった

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本の雑誌 2026年1月号 (No.511) 雪だるま餅つき号 / 本の雑誌社 / 1000円 + 税
表紙デザイン クラフト・エヴィング商會 [吉田浩美・吉田篤弘] / 表紙イラスト 沢野ひとし

赤松りかこの本棚は読書のための道具。何度も読んでボロボロになった文庫本がかっこいい。

特集:本の雑誌が選ぶ2025年度ベスト10

1位は『百年の時効』、2位は何度も取り上げられてきた『対馬の海に沈む』、どっちも面白そうだ。
読者の選んだベストでは雨宮まみを知らないけど『40歳がくる!』、『南洋標本館』『翠雨の人』と女性の話が少し気になりました。
鏡明のSF1位は『伊藤典夫評論集成』。私が読んで面白いのか何度も悩むが、白石朗の言う「翻訳観」には触れてみたい。それより2位『バベル』、3位『侵蝕列車』かな。6位『街の彼方の空遠く』は白石朗によると90年代の吉祥寺と中央線文化が描かれるらしく俄然読みたくなった。コミック版『ソラリス』は答え合わせになりそうで躊躇う。
池上冬樹のミステリーでは2位『少年の君』。1月号の三橋曉の紹介も良かったけど辛そうなんだよな。

高野秀行のは全部ちょっとだけひっかかる(が、きっと読まない)。
クラフト・エヴィング商會の『グーテンベルグの時代に回帰する』の本の作りは見てみたい。
高山羽根子の『自転車』。移動を制限されてきた女性ら被抑圧者たちの解放に役立ったという視点に驚きました。
風間賢二のは全部怪しくて、良い。
田中香織の『マンガの原理』『本なら売るほど』はチェク済み。書店員3人が挙げる『帰れない探偵』、佐々木敦と佐久間文子が挙げる『世界99』は今号で知りました。

佐久間文子の現代文学ででは『ハックルベリー・フィンの冒険』をジム側から描く『ジェイムズ』、『4321』。あ、円城塔の『去年、本能寺で』も買うのを忘れてた。
栗下直也のノンフィクションは今年も10冊全部いい。紹介がうまいのよね、様々な視点から描かれたテーマを短い文章できっちり伝えてくれます。気になっていた『西村賢太殺人事件』の最後のネタを割ってくれて、なるほどね。『潤日』は日本でフツーの生活に憧れて移住してくる中国人の話。だろうね。『ザ・芸能界』の首領たちの危機感が面白い。
高頭佐和子のエンターテインメントではで『PRIZE』『YABUNONAKA』がイロモノではないことがわかりました。

新刊

大森望が番外で紹介する『滅亡するかもしれない人類のための倫理学』はSF的なテーマも含まれるようで。ニール・スティーヴンスンの新刊『ターミネーション・ショック』は忘れてた。買わねば。
梅原いずみの「臆せず挑め!」は量子力学に対しての臆せず。逆にそれで興味を惹かれる読者も多そうなのが『もつれ星は最果ての夢を見る』。『サイレントヒルf』の原作・監修はコナミデジタルエンタテインメント。買うか。
久田かおりの紹介本はすべてなんとなくヒーリング。癒やされたいのだろうか。『いちばんうつくしい王冠』が良いかも。
内田剛では『地球の歩き方 戦国』。戦国時代にどう旅行するのか、それだけで読みたい。

連載

穂村弘の「依頼は絶対に断るな」は真理と思います。
和氣正幸が紹介する「TOUTEN BOOKSTORE」。経験とデータ分析の末にマンガが多いってのがすべてのような。身も蓋もないけど。
竹田信弥は西荻窪 BREWBOOKS。メモ。
urbanseaは「こういう一節」。こうした一節に気づける人間になりたいです。
北村薫は吉川英治の『草思堂随筆』の泥棒の話。書物を雨水に濡れるような所には置きません、と。かっこいなぁ、泥棒だけど
栗原康は『43歳頂点論』。角幡唯介の冒険書にアナキストを見る、その読み取り方が自然で、全体から強い推薦の気持ちを感じました。いい文章。
藤野眞功はロバート・ロドリゲス。私も「エル・マリアッチ」を観たときは、低予算でよく撮ったとは思ったけどそれだけ。作家性は感じられませんでした。あっという間に偉くなったけどな。
円城塔はナッジとフィクション。心理を扱う分野での実験に「再現性がない」の一言が辛い。だろうなぁと思えるだけになお辛い。
風野春樹はおみやげ。そうか「白い恋人」も「萩の月」も1970年代後半か。

次号の特集は「本ヲ終活セヨ。」創刊当初の本の雑誌なら、ビルの窓から投げ捨てそうな特集。椎名誠はデビュー45年。一時代が過ぎるよな。

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