本の雑誌 2025年11月号 – 鴻巣友季子の連載希望

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本の雑誌 2025年11月号 (No.509) 粟餅危機一髪号 / 本の雑誌社 / 800円 + 税
表紙デザイン クラフト・エヴィング商會 [吉田浩美・吉田篤弘] / 表紙イラスト 沢野ひとし

特集:世界の文学賞を目指せ!

文学賞だけでなく、翻訳小説の入門としても素晴らしい特集でした。特に良かったのが鴻巣友季子。文学賞の定義から翻訳者の立ち位置を力強く訴え、同時に現在の日本人作家の海外での人気についても広く紹介。連載で常に最新情報を提供して欲しい内容でした。ヒーリングフィクションも初めて知りました。猫、桜、喫茶店。漫画で言えば「ゆるキャン」みたいのなんだろうな、読んだことないけど。日本だけでなく、世界のみんなも疲れているということか。

圧巻は川口則弘の世界の文学賞リスト。めくってもめくってもリスト。しかもコンパクトな紹介がエッセンスの塊で読ませる。ノーベル賞を異常扱いするのもおかしいが、こうやって全体を俯瞰するとそう思わされます。20年越しに評価するフェニックス賞がいいね。日本人受賞者に安野光雅、鈴木光司、梶尾真治 (これはヒーリング枠?)。『おらおらでひとりいぐも』の英訳に驚きました。

入江敦彦は賞を持ち上げるが、編集者座談会で売れないって言ってるがな。あと、ダガー賞は英国推理作家協会賞。大したことないと早川書房。ピューリツァー賞には文学もあるんですね、初めて知りました。

何度調べても忘れてしまう王谷晶は「おうたにあきら」、鴻巣友季子は「こうのすゆきこ」と読む。『ババヤガの夜』は激しい小説らしくちょっと興味。

新刊

大森望では『百年文通』。伴名練はタイトルからうまい。
久田かおりの『そして少女は加速する』の作者が宮田珠己と聞いて驚きました。少女が主人公なんて恥ずかしくて書けない人じゃなかったの!?
立派な本棚なのに背表紙が揃わない書評家らしい、東えりかは本名らしい。今月の本棚で初めて顔を見ました。『男が「よよよよよよ」と泣いていた』『呪文の言語学』が面白そう。後者の風野春樹の紹介を読むと、ルーマニアの異文化ぶりが立ち上がります。
藤田香織の『降りる人』は、ある特定の読者には深く突き刺さりそうですが自分はどうか。
山岸真の紹介でニール・スティーヴンスンの新刊が出るのを知る。『ターミネーション・ショック』。

連載

泉麻人によると、東京タワーができて若者が集まり、六本木が盛場になるらしい。へぇ。三島由紀夫が俳優デビューしたというのも知らなかった。
和氣正幸は学芸大学の「たい焼きが冷めるまで」を紹介。心配しかない。いい意味で無理に続ける気はないのかもしれない。
井上荒野は免許を取得し晴々とした感じが文章からもテーマからも伝わります。人生は生きているだけではないと。
内澤旬子も田舎暮らしで強くなった一人。キエーロ便利そうだが、そもそも虫は必然では?
北村薫が紹介する『御用控張』面白そう。でも入れ歯の粟餅とか本当かなぁ。関連して読み物作家ガイドは井伏鱒二。坂上友紀の書誌も絡めた紹介がうまい。

栗原康は『エキストリーム・センター』に「レイト・ファシズム」。この人の論調はとてもロジカルでわかりやすい。「ファシズムに確たる理論的体系などない」ですよねぇ。
服部文祥も常に説得力がある。『ぼくはテクノロジーを使わずに生きることにした』。
藤野眞功は『チェチェン民俗学序説』。翻訳の名を借りた描き下ろし。チェチェンの精神の源、ウェズデンゲルが紹介される。「道徳」らしい。いい話だけど、そのような民族が共通して持つ何かが、現代の個が重要視する時代に本当にあるのだろうか?
北原尚彦の大学生活、いいよねぇ。私も新刊ばかり追うのではなく、もう少し古本に行っても良かったのでは?

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