本の雑誌 2015年8月号 (No.386) / 本の雑誌社 / 778円 + 税
表紙デザイン 和田誠 / 表紙イラスト 沢野ひとし
「本棚が見たい!」の忍書房の大井達夫って、大井潤太郎のことですよね。なぜ名前が違うんでしょうね、読者なら誰でも分かりそうなのに…。宮田珠己の本棚は『世界大博物図鑑』がダンボール箱にきちんと収まっているのがいいです。あれ輸送用って書いてあるのですが捨てる人はいないですよね。その宮田珠己のディックの文庫本の話が私と一緒で大笑い。とりあえず出たら全部買う -> どれを読んだか分からない -> とりあえず一冊読む -> 最後のほうまで来てこれ読んだわ _| ̄|○
2015年上半期ベストは、順位そのものよりも対談が面白いです(徳永圭子の言うとおり)。杉江の「二人(目黒、浜本)に聞きたいんだけど、どうして飽きないんですか。ダメ男小説。」ってところは、かねてから不思議に思っていたところでした。あと「俺(目黒)は今年69歳になるんだけど、『春や春』は17歳になって読んでた。」ってところも、そうか、そうかと思いました。
その後の「出版業界上半期」座談会もわかるなぁ、と。『イニシエーション・ラブ』の芸能界でのブームなんて、ようやく有田まで来た、ですから、最高です。しかし『火花』は芥川賞だからね、三島賞はもったいなかったですね、せっかくメジャーになるチャンスを逃しました。
大森望と茶木則雄の座談会は特集の「人はなぜ本を返さないのか!?」の中。春日武彦と同じ趣旨で納得の展開でした。価値観の違いだったり、貸す行為借りる行為の意味、一度読み終えられた本の価値等々。特集の読者のはがきで興味深いのは貸した借りたよりも「地方定価」という定価。昭和29年発行の『ビーグル号航海記』は、定価280円、地方定価290円らしい。へぇ、そんなのがあったのか、と読者の越川映子ともども驚いたのでした。
中山可穂を大絶賛している丸善ラゾーナ川崎店の Tさんは高頭佐和子。「本屋大賞2015」でも『愛の国』を激勝し、発掘本で『サイゴン・タンゴ・カフェ』を推しています。関係ないけどカリスマ書店員がいれば周囲も感化されるのか丸善ラゾーナ川崎店からは他に3人のコメントが掲載されています。その高頭佐和子の貸し借りした漫画『戦え! 軍人くん』『鋼の人』『純情クレイジーフルーツ』はどれも私の愛読書で、思わず本棚の中から取り出しました。
閉店したリブロ池袋40年の振り返りは、有名な逸話ばかりなのかも知れませんが、ここまでリブロが仕掛けていたのかと私には驚きの連続でした。結局、浅田彰もニューアカもここからだというんですから凄いです。極力感情を配した田口久美子のザラザラの筆致には、逆に抑えまくる気持ちの高鳴りが感じられ逆に痛々しいですね。
服部文祥はデルスー・ウザーラの紹介。本よりも黒澤の「デルス・ウザーラ」を観たいなと思ったら『樹海の迷宮』という黒澤の撮影記録本の広告。やるじゃん > 編集部
ベストセラー温故知新が非常に面白かった入江敦彦の連載が再開。タイトルは「読む京都」。仮名文化による和意創設を掲げる京都人。唐はもちろんのこと、ミヤコと地方を分断し、田舎歌の万葉集を切り捨てます。相変わらず面白い。しかもこれまでの日本人論をも含みそうな展開。期待です。
新刊めったくたガイドで良さげは辻村深月『朝が来る』。『島はぼくらと』『ハケンアニメ』と最近の活躍は素晴らしく、いずれ超々ベストセラーが出ることが予想されます。そして沢田史郎が推す『世界の果てのこどもたち』(これは久田かおりも)と『君の膵臓をたべたい』。後者はラノベ層に広がればいけそう。最近の文庫は1000円超えが珍しくないけど『泰平ヨンの未来学会議』の薄さと値段には驚きました。中古価格を考えれば安いもの? 倉本さおりが降板。事情ってなんだ?
円城塔がベイズ統計学を紹介すれば、風野春樹は骸骨の写真集。この見開きの理系感はいいよねぇ。
三角窓口に学生21歳が登場。単純に嬉しい。
堀井慶一郎の連載はいつもなんかなぁですが、今回はえ!? と驚き。文庫の分厚さは変わってもカバーの長さは同じというもの。分厚くなれば折り返しの部分が短くなる理屈。え、ホントですか。それとも新潮文庫だけの話?
亀和田武は澁澤龍彦の10冊。同時代同背景の中での共感の中には、もちろんよくあるタイプの神格化した紹介はありません。ちなみに私が最初に澁澤龍彦を知ったのは『世界大博物図鑑』の献辞からでした。