忠誠の誓い – 意外な拾い物

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忠誠の誓い / ラリイ・ニーヴン&ジェリイ・パーネル / 峯岸久訳 / ハヤカワ文庫SF / 560円
カバー : 鶴田一郎
Oath of Feality by Larry Niven & Jerry Pournelle, 1981

完全環境計画都市<トドス・サントス>の経営陣と、これに反対する近郊都市ロサンジェルスの住民、政治家、反対活動家を巡る対立。献辞にあるハインラインの「道路を止めるな」を拡大したような話しです。

前半部の子どもたちのいたずらから事件が発生し、本物のテロ事件につながるまで、メインのストーリーは予想できたものの、読みどころはそこになく、完全環境計画都市が本当に成立するのかが様々な視点で手を変え品を変え語られます。

時代のせいか、翻訳のせいか、共著のせいか、読みづらい部分が多々あって疲れますが(ために、テロリストらに極刑を与えない理屈などの説得力がまるでない)、それでも<トドス・サントス>の住民が自分たちの環境を誇示すればするほど閉塞感を感じるのは、ディテールの積み重ねが良かったのでしょう。それは監視体制だったり、共同食堂だったり、ルーナンのリポートだったり、逆に外側のマックやドノバン側の語りだったり。

皮肉なことにラスト、外側からレポートするジャーナリストらの方がはるかに広がりや風の動きから開放感を得ます。

上で述べたように途中は退屈でしたが読み終わってみれば、意外な拾い物でした。

ただし。メインの女性キャラが敵にレイプされながら、これをあっさり処理するあたりは、脱獄させた黒人サンダースにアフリカの仕事を与える無神経さと一緒の、根深い女性蔑視や人種差別を感じました。深読みしすぎでしょうか…。

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