カラフル

投稿日: カテゴリー

カラフル / 森絵都 / 文春文庫 / 510円+税 / 1998年
イラスト: 長崎訓子 / デザイン: 池田進吾 (67)

大きな過ちを犯して死んだ「ぼく」は、輪廻のサイクルから外れるべきところを他人の身体に入りテスト – タイムリミット付きで前世で自分が犯した罪の記憶を取り戻すのか、思い出せずタイムオーバーとなるのか – に挑戦することになる。
「ぼく」は、中学三年生の小林真が自殺した直後の身体に入り、天使プラプラにガイドされながら、真として生活するなかで、自分の過去の記憶を取り戻そうとする。

タイトルが示すように誰もが自分の色彩を持っています。それも単純な一色ではなく、油絵のように何層にも塗り重ねられている。あるいは同じ青でも、抜けるような青空を感じる人もいれば、深海からの脱出のための水面を見る人もいる。

真は、他人のそのような多面性を理解できないまま何となく自殺に至ってしまいます。実際には、いじめられっ子で取り柄のない佐野唱子はもちろん、好きなもののために生きているはずの桑原ひろかでさえ、心情は揺れているにも関わらず。もちろん大人たちも、表面とは異なる別の顔を持ち、それぞれに悩みながらも生きています。

死ぬべきでない理由で死んでいる人に再挑戦の権利を与える。きっと抽選ではないですよね。

とても良い作品ですが、中学高校時代でしか味わえない苦さや喜びが確実にあると思います。『ライ麦畑でつかまえて』にも同じものを感じました。「高校生が選んだ、読みたい文庫 No.1」は伊達ではありません。未読の方はどうか、お早めに。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です