本の雑誌 2014年8月号 (No.374) ヤカンがぶ飲み特大号

本の雑誌 2014年8月号 (No.374) / 本の雑誌社 / 762円 + 税
表紙デザイン 和田誠 / 表紙イラスト 沢野ひとし

今号は常連のエッセイが前半をバッチリ固めますが、それもこれも宮田珠己のしょぼさから、内澤旬子のワードローブ観察につなげたかったから。ちなみにその前の伊東潤の3万円分の図書カードで買った本で角幡唯介を出しておいて、後の『地図のない場所で眠りたい』の広告に高野秀行とのツーショットをつなげるあたり上手です。

冒頭は東日本大震災からの日本製紙石巻工場「奇跡の復興」を描く『紙つなげ!』。内容を一言で表す、シンプルで力強いタイトルがいいよね、と紹介を読んだ時も思いましたし、店頭でも目立っていました。著者の佐々涼子は『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』もそうだったように、タイトルの付け方、題材の選び方が素晴らしいですね。驚いたのは版元。偶然ハヤカワ・オンラインで書影を見つけ、「へぇ、他社の本でも紹介するんだ」と思ったくらいに、らしくない。著者も「最初は、SFを書けと言われるのかなと思った」そうで。

石巻の製紙工場「奇跡」の記録 出版支える場…「タスキ渡された」 – インタビュー | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト

上半期ベストは『クラスメイツ』。浜本&目黒の発行人コンビで選出したようですが主張があっていいですね。森絵都は、まず高校生が読みたい文庫 No.1『カラフル』を読まねば。

特集は「ブックオフでお宝探し!」。文中で触れられている通り、私も普通の古書店と違って、なんとなくブックオフって後ろめたさを感じます。新古書店が問題になったときの印象が残っているからでしょうが、今やそんなことを引きずるのは昭和の人間だけで、立派な「本屋」さん。しかも場所によってはそこらで最大の「本屋」さんですから、時代は変わります。
対談に、ブックオフの居抜き建物紹介に、全店制覇に(まだ途中だけど)、お宝探し。個人的には超うっとーしー、ビームせどりが月40万円も稼ぐということ。そりゃみんなやるわな。

読み物作家ガイドは菊池仁による渡辺淳一。なんの興味もない作家でしたが、いやぁ、なんて凄い恋愛小説家だったのよ(ただし30年前)、と力強く思わされる良い書評。『まひるの』も『ひとひらの雪』も繊細で絵がきれいそうです。また作家のみにこだわらず、テンポよく関連書籍を挙げていき、恋愛小説ジャンルのガイドにまでなっています。素晴らしい。

入江敦彦のベストセラー温故知新は『キッチン』。海外でも評価が高いことを初めて知りました。その下地は少女マンガ、というのは『ハリー・ポッター』が少年ジャンプを下敷きにしている論と同じ。
『すべての男は消耗品である』の文庫あとがきでは山田詠美がボロクソ言っているらしい。本文は読む気しないのだけど、あとがきは読んでみたい。
新刊紹介では北上次郎の千早茜『男ともだち』の書評と吉川トリコへの期待がよかった。

吉野朔実の本好きのお父さんは気になりますね。お母さん、一人暮らしなのでしょうか…。

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