おすすめ文庫王国 2009年度版 / 本の雑誌社 / 760円+税
表紙イラスト : YOUCHAN
表紙デザイン : 呉事務所装幀会
文庫王国の新版です。Twitter で堺三保だったかが「2009」と書くと来年売れないぞ、と言ってたけど確かになぁ。
で「ベストテン」。『一瞬の風になれ』と『獣の奏者』を別格作品に位置づけ、空いた枠で可能な限り「本の雑誌」が拾わなくてどうする的なものを拾うという姿勢(一部、本選から漏れていた有名作はある)は、断固支持します!! ジュンク堂の売上ベスト100中、村上春樹、伊坂幸太郎、東野圭吾の三人だけで31点という事実はちょっと寂しいです。
きっちりと書影を全作品、大きな画像で紹介したのも良かったと思います。
ジャンル別ベスト10は前半パートは前振りがみなさん長いのと、長島千尋がまったくつまらないのに閉口するし、大森望はおとなしいので今一つ。例外は「本の雑誌」界隈でしばしば取り上げられる『15×24』を筆頭に紹介するラノベの三村美衣。専門外ですが、面白そうです。後半パートは昨今のミステリーやノンフィクション(エンタメノンフ含む)の強さを象徴したかの、幅広く面白そうな作品が山のよう。中でも『犬の力』は本当に強いですね。その前の偏愛文庫もよかったし、風野春樹のグイン・サーガも愛ゆえの批判等も含めよかったです。
北上次郎と茶木則雄は本屋さんが発注の時に使うランク表を元にした対談。私も本屋でバイトしていて「ランクAだけ全部1冊づつ注文しといて」と言われて「むぅ」と思った記憶があります。あれは公開してもいいと思うのだがな、色々見えるので。
ベスト10別格作品の作者、佐藤多佳子の文庫オールタイムベストはこれぞ、という綺麗な作品が並び惚れ惚れします。
「文庫FA戦争」は洋物も取り上げて欲しかったし、また吉行淳之介の考察ではさすがにデータのみより坪ちゃんの愛あるエッセイの方が面白い。昨年好評の文庫版元進路相談は学校名も追加でさらに面白くなりました。進路指導された版元の反応も欲しいところ。その激しい受験競争に新たに参加するメディアワークス文庫だけど、ラインアップはともかく、このキャラクター(名前募集中)はないんじゃないか…。