別れを告げに来た男 / ブライアン・フリーマントル / 中村能三訳 / 新潮文庫 / 320円 (石山さんにもらった?)
カバー 辰巳四郎
Goodbye to an old friend by Brian Freemantle
エィドリアンは共産圏諸国から英国に逃亡してきた人物の評価を生業としている。ソビエトから亡命してきた宇宙開発計画責任者ベノヴィッチの評価を行っている最中に、彼の共同研究者であり、より重要なパーヴェルも亡命を希望。エィドリアンは二人の評価を開始する。
フリーマントルの未読本が大量にあるものの、どこまで読んでいるのか分からないのでデビュー作から時系列に読むことに。で、本作は確実に再読なのですが、それでなくても亡命したパーヴェルの意図は、ほぼすべての読者が勘づくと思います。では「いかに?」の部分がこの小説の肝で、意外なアイデアに感心します。伏線は堂々と張っているのにね。最後の展開なども後のチャーリー・マフィン・シリーズを思わせる後味でいい感じです。
ただ、パーヴェルの意図を伏せたままの直線的な展開と、鳩や、かつらや、妻の問題等、アイコン的な扱われ方だけでしかない脇の線など、現代の読者からするとちょっと平凡、かつ退屈。ワンアイデアだけの200ページの小説が存在すること自体、時代 – 1973年の作品です – を感じます。