本の雑誌 10月号 (No.292) / 本の雑誌社 / 530円 (505円)
表紙デザイン 和田誠 / 表紙イラスト 沢野ひとし
特集は「いまニッポンの文庫はどうなっているのか!」
各文庫創刊の様子や、生存率、解説、目録といった多面的な紹介ですが、今ひとつ文庫への愛が感じられずに欲求不満。読者投稿による「私の初体験文庫」は面白かったけど、「今日の早川さん」の特別篇でも載せた方がよかったのではないか。
今号でもっともワクワクした書評はローヤー木村の「吉原手引草」。これまでも散々賞や権威とは無縁にぶった切ってきた木村氏に「完敗である。」と言わせる直木賞受賞作。評だけ読むと、どこか凄いアクロバットがありそうです。
津野海太郎のサブカルチャー創世記は1972年で「新劇に何が起こったか」。連載がどこまで続くのか分かりませんが、一つの節目になりそうなことだけは確かです。
ビンゴ本郷は偽メンヘラーを嘆きますが、実際問題として会社の同僚にもいるのですよね、そういうの。絶対リアルなのは、三森多恵子よりももち麗子だと思います。
他では牧眞司、神谷竜介、トヨザキ社長らの一気呵成な語りが記憶に残りました。
ところで本誌後半がやたらと重いのはどうしたものか。「悪党どもの肖像」「ヒーローたちの荒野」「岸和田DNA」(笑)「このイヤミスに震えろ!」「柳下毅一郎の特殊な本棚」。うーん。